2016 Fiscal Year Research-status Report
サステイナブルな物質生産を目指したプレニル基転移酵素の構造・機能解析
Project/Area Number |
16K18501
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松井 崇 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (30463582)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | X線結晶構造解析 / プレニル基転移酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
プレニル基転移酵素(PT)によって修飾された天然化合物は強力な生物活性を獲得することがある。PTのうち、多様な基質を触媒可能なインドールPT(IPT)は、非天然化合物の生合成研究と結晶構造解析が進められているが、IPTによる効率的な有益物質の生産へは応用できていない。そこで、本研究は、IPTの中でも基質特異性の異なるいくつかのIPTの立体構造・酵素反応の相違点を明らかにし、IPTの普遍的な基質認識機構と、基質特異性を発揮する構造的特徴を解明することで効率的に有益物質を生産可能な変異型IPTの創出を目指す。本目的を達成するために、平成28年度は、複数のIPTの同定、大腸菌発現系の構築、精製法の確立と結晶化を行った。 その結果、次世代ゲノムシーケンサーやデータベースより5種類のIPT候補遺伝子を得ることに成功した。これらの候補遺伝子はN末端HisタグまたはC末端Hisタグ融合タンパク質として発現可能な大腸菌発現用プラスミドのpQE80LまたはpET22bへ組み込み、発現用大腸菌株へ形質転換した。その結果、4種類の候補遺伝子からHisタグ融合IPTを調製することに成功した。得られた各IPTはIPTの濃度、結晶化温度や結晶化条件を変えて条件検討を行い結晶化を試みた。その結果、2種類のIPTより初期結晶が得られたが、現在のところ、4オングストローム程度の分解能を示す結晶しか得られていない。より高分解能なデータを取得できる良質な結晶を調製するために結晶化条件を再検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の達成目標は、少なくとも1種類の新規IPTの構造決定、および、新規IPTのプレニル基転移反応解析であった。以下に、2項目に分け、それぞれの事項に対する達成度を自己評価した。 1. 立体構造解析において、2種類の新規IPTの初期結晶を得ることができた。しかし、各結晶の分解能は4オングストローム未満であり、酵素反応機構の詳細な理解に必要な分解能は達成できていない。現在、高分解能結晶の取得に向けて条件検討を行っており、目標より進捗はやや遅れていると評価した。 2. 新規IPTの基質特異性の解析のために、酵素反応条件、HPLCの分離条件の検討を行い、これらの反応・分析条件はおおよそ決定できた。しかし、結晶構造解析に向けた試料調製および結晶化に注力したため、目標である反応生成物の解析等は実施できておらず、目標より進捗はやや遅れていると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の実施状況を踏まえ、平成29年度は以下の通り研究を推進する方策を取る。 1. 高分解能結晶を調製する目的で、4種類のHisタグ融合IPTについて、タグの切断や、タグ結合部位を変更することでより良質な結晶を調製する。この結晶を用いてIPTのX線結晶構造および、IPT-基質複合体結晶構造を決定する。 2. 条件検討済みの精製条件を用いて、in vitro酵素反応で得られた酵素反応生成物を単離精製し、化学構造の決定を進める。 3.さらなる新規IPTを探索し、同IPTについて1および2と同様の研究を進め、目的とする複数の異なる基質特異性を示すIPTの構造・機能解析を進める。
|
Causes of Carryover |
複合体構造解析のための基質アナログ購入費として8万円程度を予定していた。しかし、複合体構造解析まで至らなかったため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度にIPT-基質アナログ複合体の構造解析を予定しており、その際、購入資金として利用する予定である。
|
Research Products
(6 results)