2016 Fiscal Year Research-status Report
新規エンドO-マンノシダーゼの同定 ―新たな脱糖鎖ツ―ルの開発に向けて-
Project/Area Number |
16K18521
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
平山 弘人 国立研究開発法人理化学研究所, 糖鎖代謝学研究チーム, 協力研究員 (50525847)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酵母 / 糖鎖 / O-結合型糖鎖 / 遊離糖鎖 / マンノース / 細胞壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物において新たに合成されたタンパク質への糖鎖修飾はタンパク質自体の安定性・機能の向上に寄与しているだけではなく,様々な成体内プロセスにおいて重要な役割を果たしていることが様々な研究から報告されている。一方,タンパク質を修飾している糖鎖の分解についての分子メカニズムの詳細については,未だ不明な点が多いのが現状である。我々は,遊離N型糖鎖(fNGs)と呼ばれるタンパク質から切り出さたN-結合型糖鎖の分解経路を出芽酵母を用いて解析している過程で,今ままで報告のないO-結合型糖鎖由来の遊離糖鎖(遊離O型糖鎖(fOGs))がマンノースを炭素源とした培養条件下でのみ生成されることを見出した。従って出芽酵母は今まで知られていないような新規のエンドO-マンノシダーゼを持つことが強く示唆された。 さらに,マンノース添加時にEOMの発現量は転写レベルで制御されているのかを検討するため,種々の転写因子欠損株におけるfOGsの生成量を解析した結果,Cyc8と呼ばれる転写抑制因子の欠損株では,マンノース培養条件下で,野生株に比べて過剰なfOGsを生成することを見出した 。このEOM活性化による糖タンパク質からの過剰な糖鎖脱離の結果,細胞壁ストレスが起こり,最終的に生育阻害という表現型を示すことが判明した。現段階において,EOMの転写調節メカニズムについての詳細は不明であるが,EOMの活性は転写抑制因子Cyc8により厳密に制御されていることが示唆される。これらのことを踏まえ,EOMをコードする遺伝子を取得するために,「cyc8破壊株とその他全ての遺伝子変異株を掛け合わせ,cyc8株の表現型をレスキューする遺伝子変異株を探索する」方法によって現在遺伝子を探索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画したとおり変異原EMSによって取得したEOM活性を欠損株の変異点同定を行なった。残念ながら,全ての変異体の変異はEOM酵素本体に由来する変異ではなかった。そこで,我々はバックアッププランとして計画していたアプローチ「cyc8破壊株とその他全ての遺伝子変異株を掛け合わせ,cyc8破壊株の表現型をレスキューする遺伝子変異株を探索する」によってEOMを同定する方法への変更を余儀なくされた。つまり,cyc8変異株とその他の6000個の遺伝子変異株を掛け合わせた後に,胞子形成・減数分裂を誘導しcyc8破壊株とそれ以外の遺伝子の二重破壊株を作成し,cyc8破壊のマンノースに対する感受性を抑圧するような遺伝子群を同定,その中にEOM本体をコードする遺伝子が含まれていないかを検討する網羅的スクリーニングを行うことにした。
しかしながら,cyc8破壊株は胞子形成にも欠損が出るため,他の変異株と掛け合わせを行うことが困難なことが判明した。そこで,cyc8の破壊株ではなく,CYC8シャットダウン株を作成することにした。具体的には2種類のCYC8シャットダウン株,Doxycyclin(Dox)依存型シャットダウン株(TetOff-CYC8)及びbeta-estradiol依存的に発現が制御できる株(Z3EV2-CYC8)を作成し,どちらがスクリーニングに適しているかを検討した。その結果TetOff-CYC8株はDox存在下でも僅かに発現するためcyc8破壊よりもマンノースに対する感受性が弱いことが判明した。従って,網羅的スクリーニングに適したZ3EV2-CYC8株を使用しEOMをコードする遺伝子の探索を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
作成したCYC8シャットダウン株(Z3EV2-CYC8)と他の6000個の酵母の全遺伝子破壊株を掛け合わせ,二重破壊株を作成し表現系を確認する。この際,スクリーニングのスループットをあげる為に384の細胞を1プレート上で自動レプリカできるロボットを使用する予定である。このロボットによるスクリーニングによってコントロールよりマンノース存在下における生育が向上した株を同定,表現型抑圧の度合いにより順位付けを行い,一番生育が回復した株から順に解析を行ってEOMをコードする遺伝子の同定を試みる予定である。
並行して,CYC8破壊株細胞内でEOM依存的に脱マンノシル化される基質糖タンパク質の同定を行う。具体的には,質量分析によりWTとcyc8シャットダウン株(もしくはcyc8破壊株)のO-結合型糖鎖付加部位を比較・定量する。 この際,伸長したO-結合型糖鎖(Man2-5)は糖ペプチド断片のイオン化効率を低下させ検出感度を低下させることが知られているので,O-結合型糖鎖が伸長に関わることが知られている3つのマンノース転移酵素Ktr1Kre2Ktr3の破壊をWT,およびcyc8変異株上で行う予定である。
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