2016 Fiscal Year Research-status Report
Video-imaging of amyloid disaggregase, Hsp104, on amyloid fibrils
Project/Area Number |
16K18524
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中山 隆宏 金沢大学, バイオAFM先端研究センター, 助教 (00532821)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子シャペロン / アミロイドタンパク / 高速原子間力顕微鏡 / 一分子観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)ステージ基板上でHsp104のアミロイド脱凝集活性を観察するための条件検討とアミロイドタンパク、Hsp104の調製条件の検討を行った。今年度の補助金は主にタンパク精製に用いる機材に充てられた。また、本研究では種々のアミロイドタンパクに対するHsp104による脱凝集を研究対象としているが、そのうちの一つであるプリオンモデルタンパクSup35について、本年度、理化学研究所脳科学総合研究センタータンパク質構造疾患研究チーム・田中元雅チームリーダーから共同研究の依頼を受け、共同研究として実施することになった。 高速AFM観察は個々の凝集体・線維、酵素の立体構造動態を直接観察することができるが、生化学実験が溶液中に遊離している液中反応を測定するのに対して、高速AFMではステージ基板上しか観察することができないので固液界面で反応が起こる条件を決定することが必須となる。ステージ基板上にアミロイドタンパク凝集体・線維やHsp104/Hsp70/Hsp40酵素群がステージに強固に結合すると、凝集体・線維と酵素の結合を妨害してしまう。逆にステージ基板との結合が弱いとステージから試料が解離してしまい、高速AFM探針が立体構造を撮影することができなくなる。従って、アミロイド凝集体・線維がHsp104の活性を阻害しない程度にステージ基板と結合し、一方でHsp104/Hsp70/Hsp40はステージ基板と相互作用せず、線維に結合できる観察条件を見つけ出すことが本研究の成否を握っていた。 これまでに、構造の異なるアミロイド線維が伸長する様子(国際学会発表)、脱凝集酵素群存在下でアミロイド線維が脱凝集する様子を動画で撮影することに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の目標は、Hsp104/Hsp70/Hsp40の酵素活性特異的にアミロイド線維が脱凝集される様子を高速AFMで撮影できる条件を見つけ出すことだった。この項目については年度中に達成できたため、概ね順調に研究が進んでいると言える。 これまでに高速AFMステージ上で構造の異なるアミロイド線維が伸長する様に成功しており(国際学会発表)、さらに、アミロイド線維を高速AFMステージ基板に吸着させ、酵素群を試料チャンバーに投入し、高速AFM観察を行った。低塩濃度反応溶液中では全くアミロイド線維脱凝集反応が進行しなかったが、塩を添加すると徐々にアミロイド線維が消失する様子を観察することができた。同塩濃度条件で酵素活性がない状況でもアミロイド線維の消失を観察することができたが、酵素活性存在下の漸次的な線維消失とは明らかに様子が異なり、断続的であった。これらの結果は、低塩濃度溶液中では線維等とステージ基板の間の強固な結合が酵素活性を阻害すること、塩濃度上昇がこの結合力を低下させること、高塩濃度・酵素活性非存在下のアミロイド線維の断続的消失は線維・ステージ基板間の結合力低下で探針走査が線維をステージから脱離させやすくなった結果であること、酵素活性存在下で見られた漸次的なアミロイド線維消失こそがHsp104/Hsp70/Hsp40の活性に由来するものであることを示している。 以上、本年度の目標であるHsp104/Hsp70/Hsp40酵素群によるアミロイド線維脱凝集を高速AFMで観察することが可能であることを示すことができた他、αシヌクレイン、Hsp104等の調製条件もほぼ確定させることができたので、本研究は概ね順調に進行していると結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度は、Hsp104/Hsp70/Hsp40存在下でのアミロイド線維の消失様式がアミロイド線維の種類間でどのような違いがあるかを明らかにする。先ず、パーキンソン病原因タンパクαシヌクレインとSup35を用いて観察を行う。得られた動画から、先ず線維の消失様式に着目する。線維の消失部位(線維端もしくは線維中腹あるいは両方)、消失様式の違い(短くなる、細くなるあるいは両方)があるか比較する。28年度の観察結果から、アミロイド脱凝集には比較的高濃度の酵素群を必要とすることがわかっており(高速AFMではステージ上に存在する全ての分子が見えてしまうので、あまりにも大量の分子が共存すると区別がつかない)、Hsp70, Hsp40が脱凝集に必須という線維では研究計画に入れたHsp104/Hsp70/Hsp40の酵素の作用機序に着目した解析が困難となる状況が見込まれる。その場合は、アミロイド線維の構造に着目した解析を更に強固にするため、αシヌクレイン、Sup35以外のアミロイド線維(アルツハイマー型認知症関連タンパク・タウ、酵母プリオンタンパクRnq1, Ure2等)の脱凝集様式の観察へと研究を発展させる。
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