2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞接着分子Dscam1による細胞自律的な軸索分枝形成のメカニズム
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16K18536
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木瀬 孔明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (70769611)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 軸索 / 分枝 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞は、情報の伝達を担う軸索に分枝を形成して複数の下流領域に神経接続することによって複雑な神経回路を構築し、外的環境や内的状態に応じた適切な脳機能を実現する。軸索分枝形成において、軸索ガイダンス因子や成長因子といった外的因子による分子機構の関与が明らかにされている。一方で我々は、2万通りものアイソフォームの多様性を持つ接着分子であるDscamが細胞自律的に働くことによって軸索分枝を形成することを示し、本研究分野において全く新たな概念を提唱した(He & Kise et al, Science, 2014)。 本研究は、Dscamが細胞自律的に軸索分枝を形成する分子機構を明らかにすることを目的とする。軸索分枝形成においてDscamの下流で働く分子を明らかにするために、Dscamの細胞内ドメインに結合するタンパク質を網羅的に探索した結果、2種類の細胞骨格制御因子を同定することに成功した。これら分子を単独で機能欠損させると、Dscamを過剰発現させた場合と似た表現型を示したが、表現型としては弱かった。しかしながら、2種類を同時に機能欠損させると、表現型がDscam過剰発現のそれと同等になることが明らかになった。一方、これら分子を単独で過剰発現させるとDscamの変異体によく似た表現型を示したが、完全に同等ではなかった。しかしながら、2種類の分子を同時に過剰発現させると、Dscamの変異体とほぼ同等の表現型を示した。これらの生化学的、遺伝学的解析は、Dscamが今回新たに同定された2種類の細胞骨格制御分子の働きを直接抑制することによって軸索分枝を形成することを強く示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Dscamの新規結合タンパク質として細胞骨格制御因子群を同定することに成功し、それらの軸索分枝形成における役割を明らかにした。その結果は、それら新規分子群が軸索分枝形成においてDscamの下流で生理的に働く有力な候補因子であることを強く示唆している。本研究成果は軸索分枝形成を細胞自律的に制御する分子機構を明らかにする上で、非常に重要な一歩となった。
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Strategy for Future Research Activity |
Dscamの結合タンパク質として今回新たに同定した細胞骨格制御分子群の、Dscamにおける結合領域を同定することにも成功している。これらの結合領域に変異を導入したDscam変異体系統を作成することによって、軸索分枝形成におけるDscamとその結合タンパク質との相互作用の生理的意義を検証する。また、Dscamと細胞骨格制御因子との2重変異体を作成することによって、軸索分枝形成における両者の遺伝学的相互作用も検証し、本研究成果をさらに強固なものにする。
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Causes of Carryover |
平成28年度は既存の変異体を用いた解析に集中して取り組んだため、必要な費用が少額に抑えられたものの、期待通りの成果を出すことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は研究成果をさらに強固なものにするために新たなDscam変異体を作成する必要があり、そのために次年度使用額を用いる。29年度の交付金額を用いて、日常的な実験に必要な消耗品や生化学実験に用いる試薬を購入する。
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Research Products
(2 results)