2017 Fiscal Year Research-status Report
這いまわる細胞の「進む」と「曲がる」の間をつなぐルールの解析
Project/Area Number |
16K18537
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 昭彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特任助教 (90612119)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 細胞運動 / 細胞極性 / 走化性 / 粘菌 / 免疫細胞 / ライブイメージング / マイクロ流路 / ハイスループット |
Outline of Annual Research Achievements |
走化性細胞の極性形成や方向転換能の解析を進めるにつれ、遺伝的背景が同一の細胞で、かつ同一の環境下においても、細胞の運動速度や走化性能に大きなばらつきが見られることがわかってきた。走化性能に関する個々の細胞の特性をより詳細に調べるため、高さ、幅が共に5μm程度に制限されたマイクロチャンネルをアレイ化したマイクロ流路を作成し、1回の実験で、細胞の形態や運動、走化性シグナル分子の細胞内局在動態を高解像度で数百細胞分取得できる実験系を構築した。この実験系を用いて解析を進めたとこr、粘菌細胞の移動速度が細胞サイズに依存し、細胞極性の動態には、細胞サイズによって三つの異なるパターンが存在することがわかってきた。中程度の大きさの細胞は、Fアクチン局在によって特徴づけられる先導端をただ1つもつという意味で単極性を示し、細胞の大きさに比例した速度で走化性誘引物質の高濃度側へと一方向に移動した。長さが35μmより大きい細胞は双極性を示し、2つの側面に先導端を形成した。12μmより小さい細胞では安定した細胞極性が形成されず、先導端はしばしば振動的に振る舞った。同様の実験を、ヒト好中球様細胞であるHL60に対して行ったところ、細胞の移動速度は細胞サイズと正の相関があり、その相関はノコダゾール処理した細胞で最も顕著であった。対照的に、Rac1阻害下では正の相関が失われ、双極的な細胞極性が観察された。細胞サイズに依存した細胞極性動態が粘菌細胞と好中球で同様のメカニズムによって生じていることが期待され、今後は、サイズ依存性がどのように細胞極性機構から生じ得るかについてさらなる解析を進める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予期していなかった細胞の個別性が明らかになってきたが、新たな実験系を構築することで効率的にデータ取得できるようになり、順調に知見が集まっているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞サイズに依存した細胞極性動態が生じるメカニズムを明らかにするため、これまでに構築したハイスループット生細胞計測系を用いて、細胞内シグナル伝達系の動態を詳細に調べる予定である。また、細胞外誘引物質濃度を時間的に変動させることなどを通じて、細胞の情報処理と極性形成の関係を明らかにして行く。
|
Causes of Carryover |
研究計画を遂行する過程で、細胞の運動性と方向転換能の振る舞いが、個々の細胞によって大きく異なることが見出されてきた。細胞ごとの個別性・個性をより精緻に特徴付けるための実験を進めることが、研究目的達成に非常に重要であることを踏まえ、消耗費の一部や論文投稿関連経費を来年度に繰越すことにした。
|
-
[Journal Article] Fold-change detection and scale-invariance of cell-cell signaling in social amoeba2017
Author(s)
Kamino, K, Kondo, Y., Nakajima, A., Honda-Kitahara M., Kaneko, K., Sawai S.
-
Journal Title
Proc. Nat. Acad. Sci. USA
Volume: 114
Pages: E4149, E4157
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-