2016 Fiscal Year Research-status Report
中心小体形成におけるカートホイール構造構築の分子機構の解明
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16K18541
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
吉場 聡子 国立遺伝学研究所, 分子遺伝研究系, 助教 (70642213)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 中心小体 / カートホイール構造 / AID |
Outline of Annual Research Achievements |
中心小体形成における分子それぞれの作用点を特定するため、標的タンパク質を時期特異的にknockdownできるauxin-inducible degron(AID)システムを導入した。まず、中心小体に局在しその形成に必須である、進化的に保存されたタンパク質のうち、カートホイール構造の主要構成因子であるSas-6に対して、内在のSas-6にAID-tagを付与したヒト培養細胞ライン(HsSAS-6-AID cell line) を作成し、解析を行った。中心小体の形成過程を、マーカー分子により、超解像顕微鏡を用いて段階的にモニターしながら、時期特異的に中心小体のSas-6を分解し、中心小体形成に対する影響を調べた。その結果、これまでの、形成開始における役割に加えて、形成過程における新たなSas-6の機能を明らかにすることができた。 また、中心小体のタンパク質を精製し、カートホイール構造のin vitroでの再構成をこころみた。カートホイール構造の形成に必須と考えられるHsSAS-6, STIL, Plk4の3つのタンパク質のフラグメントを、大腸菌を用いて精製し、lipid monolayerによるタンパク複合体形成の促進を行ったのち、電子顕微鏡で観察を行った。その結果、HsSAS-6単独でも、自己会合によりカートホイール構造の一部(中心部分)の構造体ができることがわかった。 上記結果に関して、現在論文投稿準備中である。これらの結果より、中心小体の形成・維持のメカニズムの一端が明らかになり、本研究課題の大きな目的である、初期の中心小体形成過程の解明に一歩近づいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の結果に関して、2年目(平成29年度)の早い時期に論文投稿を行う予定である(29年5月現在投稿準備中)。これは年次計画通りである。また引きつづき、1年目の実績をもとに、Sas-6と協調して働きカートホイール形成に関与することが予想される他のタンパク質について、AIDの細胞ラインを作成中である。 予期しなかった点としては、中心小体を構成する分子にAID-tagを付与した細胞ラインの樹立が予想より難しく、当初予定していた分子のうち一部の分子のみ、細胞ライン作成に成功していることである。この点については、下記今後の推進方策で対応策等を述べる。 また、精製タンパク質を用いたカートホイール構造のin vitro再構成については、現在Sas-6に加えて他のタンパク質の精製を進めている。こちらは概ね計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、予定通り年次計画に沿って進めていく。一方で上記、進捗状況で述べた通り、中心小体を構成する分子にAID-tagを付与した細胞ラインの樹立が、予想より難しく、また樹立できた細胞ラインに関しても、細胞質のタンパク質に比して分解に時間がかかり、実験系に工夫が必要である。今後各分子について、tagの種類や場所、細胞セレクション時の条件など、それぞれに適した条件検討を柔軟に行っていく。 また、カートホイール構造のin vitro再構成については、大腸菌を用いたタンパク精製に加え、巨大分子複合体の精製が可能であるMulti-Bacシステムを導入するなど、複数のアプローチで進めていく。カートホイール構造全体の再構成により、構造体形成のしくみ、すなわち初期の中心小体構築過程のメカニズム解明を目指す。
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