2016 Fiscal Year Research-status Report
基底小体へと伸長するユニークな膜構造のシリア位置制御における役割の解明
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16K18543
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
根岸 剛文 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 特別協力研究員 (30726576)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シリア / 発生生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画では、カタユウレイボヤ胚の最終分裂において胚前方に伸長する新奇な膜構造に注目し、この膜構造の伸長先にあるシリアとその機能を明らかにすることを目的としている。本年度は、この膜構造の極性化のメカニズムについて明らかにすることを目的として、Dishevelled(Dsh)の解析を行った。申請者の先行実験において、Dshの機能阻害により膜構造の向きがランダムになることが分かっていた。本年度においては、Dshの機能阻害の結果を定量的に解析し、さらにDshの過剰発現により機能阻害の影響の緩和にも成功した。これらの結果は、この膜構造の極性はDshにより確立していることを強く示唆する。さらに、シリアの位置に関しても正常胚では後方に偏っているものがDshの機能阻害胚においては、細胞中央に有意に変化していた。このことから、この膜構造のシリア位置の制御に関わっている可能性が高いと考えている。以上の結果は、今までのものと併せ論文として発表した。さらに、本年度は膜構造及びシリアの機能の探るためにカタユウレイボヤ胚を覆うコリオン(卵膜)を除去せずに様々な観察を行った。マボヤ胚においても、本研究で注目している時期と相同な時期にシリアが形成され、そのシリアの働きによりコリオン内で神経胚回転が起こるとされている。通常カタユウレイボヤ胚はコリオンを化学的に除去し実験が行われるが、神経胚回転の観察のために、大沼博士、日下部博士(甲南大学)のサポートのもとコリオン付きで実験を行った。この結果、膜構造の形成時期と神経胚回転の時期は一致しており、さらにDsh機能阻害胚において神経胚回転の異常が観察できたことから、カタユウレイボヤ胚において後方に偏ったシリアが神経胚回転に関わっている可能性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、注目している膜構造の極性化メカニズムについて明らかにする計画であり、Dishevelled(Dsh)を中心とした極性化の分子的経路を明らかにする予定であった。まず、Dshの機能阻害に用いたモルフォリノオリゴ(MO)の特異性を確認するためにDsh mRNAを強制発現し、レスキュー実験を行い、正常胚・機能阻害胚・レスキュー胚のそれぞれの膜構造の極性、細胞分裂方向、シリアの位置を定量的に測定した。その結果、機能阻害胚において全ての測定結果で他と差が見られたことから、今回用いてMOは膜構造の極性化においてDshの機能を特異的に阻害しているといえる。しかしながら、上記の解析に時間がかかったため、計画中のDshの下流因子の探索を行うことが本年度中にできなかった。一方で、平成29年度以降に解析を計画していた膜構造のシリア位置への関与については、本年度のMOを用いた解析でその関与を示唆する結果を得ることができた。また、甲南大学の日下部教授、大沼博士の協力の元、コリオン付きのカタユウレイボヤ胚において膜構造の観察に成功し、膜構造及びシリアの形成時期と神経胚回転の時期が一致することを明らかにした。さらに、Dsh MOを用いて機能阻害を行ったところ神経胚回転に異常が見られたことから、カタユウレイボヤ胚においてシリア位置が正常な神経胚回転に関わっている可能性が高い。これらの解析も平成29年度以降に計画していたもので、ある程度前倒しで行うことができた。総合的に鑑みて、本年度の進捗は概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、本年度達成できなかったDshevelled(Dsh)の下流因子の探索を行う。DIX, DEP, PDZ等の構成ドメインを欠損させたドミナントネガティブ型タンパク質(ΔDIX, ΔDEP, ΔPDZ等)を発現させ、膜構造への影響を観察する。その観察結果に基づき、影響のあったドメインに結合することが他の動物で知られているタンパク質の機能阻害実験をカタユウレイボヤ胚において行い、膜構造への影響を明らかにする。この実験によりDshの下流因子を明らかにし、極性化メカニズムを解明する。また、Dsh以外のPCP因子(Vangl2、Flamingo、Prickle)に関しても機能阻害を行い膜構造の極性化への関与を明らかにする。上記3つのタンパク質に関しては機能阻害のためのモルフォリノオリゴ(MO)の準備が終わっている。これらMOをカタユウレイボヤ胚に顕微注入し、膜構造の様子をライブイメージング観察する。一方、本年度に結果を得ることができた膜構造-シリア-神経胚回転の関係に関しては、平成29年度回転が異常になる胚において左右軸への影響を明らかにする。マボヤでは神経胚回転が左右軸の確立に関与することが知られている。そこで、カタユウレイボヤ胚においても神経胚回転と左右軸の関係を明らかにする。具体的には左側に特異的に発現する遺伝子(Nodal、Pitx)の発現パータンをin situ hybridyzationで確認することで、正常胚と回転が異常になる胚において比較し、膜構造-シリア-神経胚回転のカタユウレイボヤ胚における役割を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度に計画していたDshevelledの下流因子の探索を行うために作成予定だったDIX, DEP, PDZ等の構成ドメインを欠損させたドミナントネガティブ型タンパク質(ΔDIX, ΔDEP, ΔPDZ等)を発現させるためのコンストラクトを作製を行わなかったことから次年度への繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、本年度に達成できなかったDshevelledの下流因子の探索を行うために未使用額を使用してドミナントネガティブ型タンパク質用コンストラクトの作製を行う。
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Research Products
(7 results)