2018 Fiscal Year Annual Research Report
The study of cell competition in mouse development
Project/Area Number |
16K18550
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本 昌和 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (60580496)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の細胞レベルでの解析から、発生中の胚では個々の細胞の遺伝子発現や分化の状態にはゆらぎがあることがわかってきている。その一方でマウスの個体発生においては細胞間のゆらぎが問題になる局面もありうる。例えば、胚の三胚葉組織および生殖細胞は着床期の後期胚盤胞内に作られる多能性をもった少数のエピブラスト細胞に由来するため、すべてのエピブラスト細胞が高い多能性を保持していることがその後の発生のために必要であると考えられる。 我々は本研究においてHippoシグナル経路の転写因子Teadとその共役因子Yapの転写活性(以下Tead活性)の違いによる細胞競合がエピブラストの細胞の多能性の均質化に関与していることを見出した。マウス着床前胚では初期胚盤胞までに栄養外胚葉と内部細胞塊に分化し、その後内部細胞塊がエピブラストと原始内胚葉へと分化するが、中期胚盤胞以降では内部細胞塊においてYapが細胞質から核移行することでTead活性が上昇し、その核局在量は多能性マーカーの発現量と高い相関を示した。Tead1欠損胚ではTead活性が低いと考えられるが、この胚は着床後の原腸陥入期まで正常に発生する。一方でTead1欠損細胞と野生型細胞から構成されたモザイク胚を作成すると、Tead1欠損細胞はエピブラスト特異的に後期胚盤胞までに排除された。Tead1欠損細胞では多能性マーカーの発現が減少しており、2i処理により多能性を亢進させると、モザイク胚におけるTead1欠損細胞の排除が回避された。また、野生型の正常な着床前胚においても内部細胞塊のTead活性はばらついており、中期胚盤胞期において高い頻度で細胞死を起こしていた。これらの結果から、マウス着床前胚のエピブラスト形成過程において、Tead活性の違いによる細胞競合現象が働くことによる多能性の均質性化を行なっているモデルを提唱した。
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