2018 Fiscal Year Annual Research Report
The role of cyclic electron flow in the repair of photosystem II
Project/Area Number |
16K18561
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高橋 拓子 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50748126)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 光合成 / 光化学系II / 光阻害 / 修復 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
陸上植物において、過剰な光エネルギーを熱として放散する熱放散(Non photochemical quenching, NPQ)は、サイクリック電子伝達により誘導され、強光下での光合成に重要である。我々はシアノバクテリアのNPQに重要なオレンジカロテノイドプロテインの欠損株および過剰発現株を作製し、NPQレベル、PSII光阻害等について解析した。その結果、細胞内のオレンジカロテノイドプロテインレベルが高いほど高いNPQを示し、光阻害に耐性を示した。この結果は、Plant Cell and Physiology (2019) 60, 367-375 に掲載された。これまでに、オレンジカロテノイドが強光からの光化学系の保護に寄与することは示されていたが、そのメカニズムは議論があった。我々の結果は、オレンジカロテノイド依存的なNPQが、活性酸素種の一種である一重項酸素の発生を抑えることで酸化ストレスに弱い翻訳伸長反応の保護につながり、その結果として光阻害につながったことを示した。 さらに、サイクリック電子伝達に関与するPGR5, NdhSの単独欠損変異株および二重変異株を作製し、変異が光化学系の光阻害へ与える影響を解析したところ、いずれの欠損変異もPSII, PSI光阻害への影響はなかった。一方野生型では、光条件が強光へとシフトする際にサイクリック電子伝達活性が増加する光活性化が観測されたが、この光活性化はPGR5を欠損すると見られなかった。加えて、この光活性化に伴い細胞内ATPレベルが増加する可能性が示唆された。これらのことから、PGR5は環境変動時のサイクリック電子伝達のファインチューニングを介して細胞のホメオスタシスに寄与している可能性が考えられる。
|