2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18576
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
岩元 明敏 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (60434388)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 物理的圧力 / 花発生 / マツモ / シロイヌナズナ / オモダカ目 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに確立した、シロイヌナズナの花原基に対して人工的に物理的圧力を与える実験系を用いて、花の形態形成への影響についての検証実験を行った。野生型を対象として、若い花原基の背軸側に物理的圧力を与えた結果、4パターンの花発生が観察された。1つめは、物理的圧力を加えない場合の花発生とほぼ同じパターンであり、物理的圧力を加えた背軸側の発生に若干の遅れが見られたものの、器官の形態や数には影響がなかった。2つめのパターンでは、物理的圧力を加えた背軸側の萼片原基の先端が2裂した。萼片の数自体は変わらなかった。3つめのパターンでは、背軸側の萼片が完全に2裂し、萼片原基の数が5つに増加していた。4つめのパターンでは背軸側の萼片原基の先端が3裂していたが、萼片の数自体には変化がなかった。 この実験結果から、物理的圧力によって花の形態形成に影響がでることが明らかとなった。すなわち、物理的圧力を与えた部分で萼片原基の発生、発達が抑制され、マイクロデバイスの接触解除後に遅れて発生、発達が進んだと考えられる.また、複数の花発生パターンが観察されたことから、物理的圧力によって抑制された範囲に応じて,発生する原基の数に変化が生じることも示唆された。 また、この実験と並行し、基部単子葉植物(オモダカ目)において、物理的圧力と関連した花形態の変化があるのではないかと考え、5種の花発生を観察した。その結果、物理的圧力が原因ではないものの、花弁と雄蕊のサイズと原基発生のスペースの問題により、花形態に変化が生じていることが示された。 一方で、同じく研究の目的としてあげていたマツモにおける花器官形成関連の遺伝子発現解析については、候補として考えていたシロイヌナズナDRNL遺伝子のホモログ遺伝子がマツモには存在しないことが明らかとなった。現在、新たな候補遺伝子の探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
シロイヌナズナの花原基へ物理的圧力を加えて形態変化を明らかにする研究については、ほぼ計画通りに進んだ。1年目に計画していた物理的圧力を花芽に与える実験系の開発が予定通り完了しており、2年目(当該年度)に計画にされていた実際に物理的圧力を与えた際に花の形態がどう変化していくかについての解析も実施し、いくつかの花発生パターンを得ることができた。これにより、人工的に物理的圧力を与えることで花の形態形成が変化すること、そしてその形態変化の程度は圧力を与えた面積によることが示された。 一方、計画目標のもう1つの柱であるマツモにおける花発生マーカー遺伝子の単離については、当初単離を予定していたシロイヌナズナDRNLホモログ遺伝子がマツモには存在しない可能性が高いことが、近縁植物のゲノムデータベースを用いた解析により明らかとなった。そのため、別の花発生マーカー遺伝子を見つける必要が生じ、現在も適切な遺伝子を探索中である。また、マツモ花芽のmRNAについても1個体から充分量を抽出することが技術的に難しく、大量の花芽試料が必要となるなど、試料の面でも問題が生じた。これに対して、野生のマツモを追加で採集し、昨年度までに確立した室内でのマツモ育成システムを用いることにより大量の花芽試料を得られるよう取り組んでいる。 以上により、花発生マーカー遺伝子の単離については大幅な計画修正の必要性が生じ、結果として花原基に物理的圧力を与える解析が本研究の中心となった。花原基に物理的圧力を与える研究については予定通りか、それ以上に進んだものの、花発生マーカー遺伝子の単離については予定していた成果が得られなかったことから、全体としての進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナの花原基への物理的圧力を加える実験については、ほぼ予定通りに研究が進んだ。今後、実験の例数を増やし、より多くの花発生のパターンを誘導したいと考えている。さらに、物理的圧力を与えた面積の大きさによって花発生パターンの変化に違いが生じることが示唆されたことから、物理的圧力を与えるマイクロデバイスと花原基との接触面積を定量化する方法の開発に取り組みたい。また、物理的圧力の大きさを測定する方法についても検討する予定である。 マツモにおける花発生マーカー遺伝子の単離と発現解析の解析については、まずはDRNLに代わる花発生マーカー遺伝子で、マツモにおけるホモログ遺伝子が存在するものについての探索と単離を目指したい。同時に、マツモからのmRNAの抽出の効率化を行い、in situ ハイブリダイゼ-ションを中心とした遺伝子発現の準備を推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していたマツモからの遺伝子単離が難しい状況になり、シロイヌナズナへの圧力を与える実験を中心として計画を見直した。その結果、当初予想よりも研究遂行に時間がかかることになったため、次年度の使用が生じた。今後、見直した計画を遂行するための追加実験と解析の費用や、その成果を2018年9月の植物学会(広島)で発表するための旅費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)