2017 Fiscal Year Research-status Report
MAPKシグナリングを起点とした原索動物の排卵メカニズムの解明
Project/Area Number |
16K18581
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Research Institution | Suntory Foundation for Life Sciences |
Principal Investigator |
松原 伸 公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 特別研究員 (70710747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | MAPKシグナリング / 排卵 / カタユウレイボヤ / 神経ペプチド / プロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、脊椎動物の原型を有していると考えられるカタユウレイボヤを用いて、MAPKシグナリングを起点とした排卵メカニズムを解明することである。平成28年度は計画に従い、MAPK阻害時 (排卵阻害時) に発現変動が見られた神経ペプチド遺伝子に着目し、神経ペプチドの排卵に対する影響を調べた。また、排卵実行酵素の候補遺伝子であるマトリクスメタロプロテアーゼ (MMP) について、特異的な抗体と阻害剤を用いてホヤ排卵に対する影響を調べた。 特別研究員の研究課題に関連して、候補神経ペプチドのホヤ卵成熟と排卵に対する影響を調べたところ、1つのペプチドが卵成熟と排卵の両方を促進させることがわかった。当初はMAPKの下流で神経ペプチドが制御されていると考えていたが、ペプチド処理後5-10分でERKのリン酸化が亢進されることがわかり、MAPKシグナリングはペプチドの下流で制御されることが明らかになった。 MAPK (MEK/ERK) シグナリング下流のMMP遺伝子について、組換タンパク質を作製して特異的な抗体を作製・精製した。この抗体を用いて排卵阻害実験を行ったが、抗体による有意な排卵阻害は見られず、抗体分子がホヤ卵胞に浸透していない事が原因と考えられた。そこで特異的な阻害剤を排卵直前のホヤ卵胞に添加・培養したところ、排卵率は大幅に減少し、確かに候補MMP遺伝子がホヤの排卵を実行していることが明らかになった。以上の結果から、神経ペプチド→MEK/ERK→MMPというホヤ排卵制御系の骨子が明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画に従い、MAPKシグナリングを上流で制御する神経ぺプチドと、下流で排卵を実行するMMP遺伝子を同定した。当初計画した研究項目を実施することができ、概ね期待した結果が得られたので(2)の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
特別研究員の研究課題に関連して計画を一部変更し、次年度はまず29年度に確立したMPFの濃縮系とELISAによる活性測定系を用いて、卵成熟を促進させるペプチド処理によるMPF活性の上昇を検出するとともに、MPF構成因子の特異的な阻害剤を用いて卵成熟に対する影響を調べる。また、in situ hybridizationや免疫染色によって卵成熟・排卵の各制御因子の卵胞内局在を決定する。さらに排卵制御機構についてはペプチドによるMMP遺伝子発現制御やMMPの基質同定に向けた実験に着手することで、神経ペプチドが制御する卵成熟・排卵制御カスケードを明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
計画当初の想定以上にスムーズに実験が進行したことや、参加した学会が近隣での開催だったため、物品費や旅費の一部に次年度使用額が生じた。次年度の実験では大量に必要となる神経ペプチドの追加合成の費用や、成果の論文化に際して要求される想定外の実験に使用する消耗品費などに充てる。
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Research Products
(8 results)