2017 Fiscal Year Research-status Report
減数分裂の成り立ちと本質の理解~ミジンコの単為発生卵の形成機構解析から迫る~
Project/Area Number |
16K18587
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
蛭田 千鶴江 北海道大学, 理学研究院, 研究院研究員 (20723018)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ミジンコ / 単為生殖 / 減数分裂 / ゲノム編集 / ノックアウト / ノックイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ミジンコの単為発生卵形成でみられる減数分裂を一部改変した機構について、どの過程をどのように改変させたものなのかを明らかにすることを目的に研究を進めている。昨年度より、ミジンコの単為発生卵が形成される過程の分裂装置の動態を詳細に解析するために、分裂装置を構成する標的タンパク質の下流に蛍光タンパク質を挿入したレポーターミジンコの作出を目指してきた。標的染色体領域への正確な遺伝子挿入が可能なシステムであるTAL-PITCh法の条件検討に時間を要していたため、CRIS-PITCh法も視野に入れて、CRISPR/Cas9を用いた実験系の確立を並行して実施したところ、ノックアウト法が機能したので国際誌に投稿し、受理された(Hiruta et al., in press)。引き続き、ノックイン(TAL-PITChおよびCRIS-PITCh)法が機能するか検証を行っているところである。 また、昨年度に引き続き単為発生卵が形成される際の減数分裂細胞周期の制御について、Mos-MAPK経路に着目した解析を進めた。リン酸化MAPK抗体による卵の免疫染色により第1減数分裂に相当する時期でMAPKが活性化し、前後の時期に相当する卵核胞崩壊期と第2減数分裂に相当する時期では活性化は見られなかった。これは、MAPKの活性化により第1減数分裂の停止が引き起こされ、不活性化により細胞周期が再開する機構の関与を示唆するものである。さらに、Mos-MAPK経路の阻害剤処理により、人為的な分裂の制御を試みているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関の異動により、研究遂行に必須の実験機器のうち代替品のない機器のリース契約開始が7月になったことに伴い実験の再開まで時間を要したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の要となる蛍光タンパク質をノックインしたレポーターミジンコの作出を早急に行っていく。なお、ミジンコのノックイン法の確立は報告されていないので、方法論を国際誌に投稿する。そして解析に足る個体が作出され次第、単為生殖機構の詳細な解析を進めていく予定である。また、並行してMos-MAPK経路の阻害および活性化によって、人為的に単為発生機構を制御することで、その詳細な機構を明らかにしていく。
|
Causes of Carryover |
(理由)所属機関の異動により、1)研究遂行に必須の実験機器のうち代替品のない機器のリース料が発生したため、および2)実験計画の遅れにより、当初の使用計画から変更が生じたため。 (使用計画) まず、研究遂行に必須の実験機器についてのリース費用に充当する。さらに、ノックイン法に必要なゲノム編集用の試薬・消耗品へ充当する。その後は、単為生殖様式の分子メカニズム解析に必要な試薬、消耗品、飼育器具に充当する。また、成果報告のための学会参加や論文校正および投稿費用にも支出する予定である。
|