2017 Fiscal Year Research-status Report
底生動物による海藻葉上固着生活獲得までの進化史の解明
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16K18597
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
角井 敬知 北海道大学, 理学研究院, 講師 (70723360)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | タナイス / 糸分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,底生動物がいかにして不安定な海藻葉上での固着生活を獲得するに至ったかについて理解することである.底生動物の一群であるタナイス目甲殻類は,単純な海藻葉上進出史が期待され,かつ同生活様式実現に必須である「把握」と「固着」に関わる形質に,進化的中間段階と考えられる形質状態を示す種が報告されている.そのため本研究ではタナイス類をモデルに,形態学的,分子系統学的手法を用いて,タナイス類の海藻葉上固着生活獲得までの進化史を明らかにすることを目指している. 今年度は,主に以下のような成果を挙げた.(1)日本から報告のなかったパラタナイス上科の1科の生息を新たに確認した.同種は未記載種と判断されたため,記載論文を執筆した.同論文については,査読付き英文誌から掲載受理の知らせを受けた.(2)単純なトンネルを掘りその中で暮らしていると考えられていたパラプセウデス科の1種が,粘液を用いて巣を作って生活していることを明らかにした.外部・内部形態の観察により,本種は腹尾節内に分泌腺を持つという,タナイス目で知られていなかった分泌機構を備えることが明らかとなった.本研究成果は既に論文として発表した.(3)浅海性糸上科,深海性グループに属する複数種について,RNAサンプルを作成した.(4)系統解析に用いる予定の種で未記載種であると判断されたもののうち,2種について記載論文を執筆した.執筆した2報のうち1報は既に出版されており,1報は査読付き英文誌から掲載受理の知らせを受けた.(5)カリアプセウデス類の糸分泌に関わる形態データ取得を進めた.いくつかの成果は,日本動物分類学会および日本動物学会の年次大会において報告を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採集の困難が予想されていた一部の深海性グループの採集が出来なかったが,それ以外については順調に形態用,RNA用サンプルの準備および形態観察が進んでいる.よっておおむね順調に進展しているとした.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに採集できなかった深海性グループを採集するために,一回の調査航海参加を予定している. その他計画通りに形態観察・分子系統解析を進める.
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Causes of Carryover |
(理由)採集調査内容・期間に多少の変更があったため. (使用計画)次年度使用額は,昨年度までに採集できなかった深海性グループと,新たに生息を確認した浅海性糸上科の生体サンプルを採集するための調査航海および浅海調査実施に関わる費用に充てる.翌年度分は当初の計画通り使用予定である.
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