2018 Fiscal Year Research-status Report
カマアシムシ目の分子発生学への挑戦~神経発生の解明から探る昆虫の祖先型と進化~
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16K18605
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
福井 眞生子 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 助教 (90635872)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 系統進化 / 比較発生学 / 六脚類 / 昆虫類 / 脳構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はカルチャーの回復に努めるとともに、サイコクカマアシムシおよび同属のモリカワカマアシムシ成虫頭部の組織学的研究を行った。その結果、脳構造の概形および脳微細構造の観察を行うことができた。 脳構造の各部位は前方から、後・中・大脳の順で分布すること、2) 頭部後方の囲食道縦連合、3) 前胸において前後に接する顎(食道下)神経節および前胸神経節、4) 頭部後方に大きくシフトした脳および顎(食道下)神経節などが観察された。これらは先行研究との記載と概ねよく一致する。また、脳構造全体の後方へのシフトは、サイコクカマアシムシで特に顕著であった。 一方、前大脳の微細構造のうち、5) 扇状体および前大脳橋、6) 副側葉、7) 8 つの扇状体のモジュール構造が観察され、特に扇状体でみられた 8 つのモジュール構造は昆虫類の脳の進化を考える上で重要である。一方、組織学的観察から楕円体、視葉、キノコ体を見出すことはできず、これらの構造の有無については判然としない。 また、デキストランを用いた前脚からの神経染色においては、ビオチン発色の切片観察により顎(食道下)神経節から前脚への神経走行が確認された。顎神経節から前脚への神経走行、もしくは前脚での味覚受容は六脚類内でも広く知られるが、無翅昆虫類で確認されたのは初めてのことである。 また、脊椎動物の魚類を用いた分子発生学・形態的研究を通し、ビブラトームによる切片作成法など、本研究に有用な技術の習得を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年もカルチャーから得られる卵数は少ない水準が続いたが、その一方で、神経染色においては切片観察に成功するなど、カマアシムシを用いた分子発生学的手法を確立することができた。 形態学的解析においては脳構造に関し詳細なデータを得ることができ、脳構造の概要のみならず、扇状体などの微細構造に関しても初めて明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は形態学的な追加データを得るとともに、三次元再構築を含めた解析を行い、カマアシムシ目の脳構造の概要をまとめ、発表に備える。また、十分な数の卵を確保し、遺伝子解析を試みる。
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Causes of Carryover |
前年度より繰り越している遺伝子解析関係の出費が今年度に生じなかったことによる。 次年度に実施および消化予定である。
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