2016 Fiscal Year Research-status Report
光合成光阻害回避能力の温度依存性における緯度間・標高間種内変異
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16K18614
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小口 理一 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (10632250)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 種内変異 / 光合成 / 光阻害 / 光保護 / 光化学系II |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、強すぎる光によって光合成器官に損傷が生じる光阻害に対して植物が持つ耐性能力について、以下の仮説を検証することを目的としている。仮説:光阻害耐性能力のうち損傷を受けた光化学系の修復能力と光化学系I/II均衡化能力が強い温度依存性を示すことから、低温由来のエコタイプほど生育地環境に適応するため、これらの光阻害耐性能力を高めている。 様々な緯度および標高で集められたシロイヌナズナエコタイプをアラビドプシスリソースセンター(ABRC)から入手し、共通圃場実験としてグロースチャンバー内で生育し、光阻害耐性、光化学系修復能力、熱放散能力および光化学系I/II均衡化能力の測定を行っている。現在までに22℃で生育したシロイヌナズナエコタイプについて、7℃および10℃において光阻害処理(光強度1000 μmol m-2 s-1)を行った。植物は損傷を受けた光化学系を修復する能力があるが、光阻害修復阻害剤であるリンコマイシンを与えることで修復を止めることが可能である。2次元クロロフィル蛍光測定装置を使用して、リンコマイシン存在下と非存在下での光阻害速度を測定し、その差から光化学系修復能力を計算したところ、各エコタイプの生育地の平均気温と7℃での光化学系修復能力の間に負の相関が見られている。これは仮説通り、低温由来のエコタイプほど生育地環境に適応し、光化学系の修復能力を高めていることを示唆する。 熱放散能力、光化学系I/II均衡化能力および10℃における光化学系修復能力の結果は解析中であり、今後解析を進める。また、循環的電子伝達速度の解析も行う予定である。さらに、生育温度を12℃に落とした場合にシロイヌナズナエコタイプが低温に順化することで、各光阻害耐性能力がどのように変化するかについても実験、解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
材料のシロイヌナズナエコタイプの生育および光阻害速度、光化学系修復能力、熱放散能力といった各光阻害耐性能力の測定についてはルーチン化することができ、既に各エコタイプの生育地の平均気温と7℃での光化学系修復能力の間には期待通りの結果が出始めているため。今後、ルーチン化した方法で生育と測定を継続し、異なる生育温度および光阻害温度でのデータの収集に努めることで、当初の計画を実現できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、現在解析中である熱放散能力、光化学系I/II均衡化能力および10℃における光化学系修復能力について、早急に解析を完了する。既に各エコタイプの生育地の平均気温と7℃での光化学系修復能力の間には期待通りの結果が出始めていることから、これまでの生育、測定方法を継続しつつ、異なる生育温度および光阻害温度でのデータの収集を行うことで、単一の温度条件での種内変異だけでなく、光阻害耐性の温度依存性についての種内変異のデータを得ることができると考えている。特に、シロイヌナズナエコタイプが低温に順化することで、各光阻害耐性能力がどのように変化するかについての結果が重要になると考えている。
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Causes of Carryover |
経緯としては、当初より予定していた海外での研究成果発表において、予定していた格安航空券を取得することができず、交通費が予定を上回ったために、研究成果発表および植物材料採取のための国内旅費を捻出する必要が生じ、前倒し支払い請求を行った。これにより、海外での研究成果発表および、国内での研究成果発表の旅費を支払うことはできたが、交付申請時の平成29年度の予算よりも20万円少ない状況になっている。そこで、その差を埋めるためにできるだけ消耗品費および謝金を節約した結果、42,231円の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述の経緯で前倒し支払い請求を行った際には、平成29年度の予算において実験補助のための費用、印刷費や論文出版に関わる費用を節約する必要があることを覚悟していたが、平成28年度後半の消耗品費および謝金の支出を節約した結果、42,231円を残すことができたため、これらを平成29年度の実験補助のための費用および印刷費や論文出版に関わる費用に回すことを計画している。
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Research Products
(4 results)