2020 Fiscal Year Research-status Report
大型草食動物の歯牙形態に関する進化生態学的研究:遺伝子から時代変化まで
Project/Area Number |
16K18615
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 麦野 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 講師 (10582760)
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Project Period (FY) |
2017-02-07 – 2022-03-31
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Keywords | ニホンジカ / 恐竜 / マイクロウェア / 歯 / 食性推定 / 古環境復元 / リュウキュウジカ / 更新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は化石動物を対象とした歯の微細磨耗痕(マイクロウェア)の分析を主に推進した。 1)沖縄本島の更新世末期の洞穴遺跡(山下町第一洞穴遺跡、ハナンダガマ遺跡)から出土した、リュウキュウジカのマイクロウェア分析と古生態復元、古環境推定を行った。2遺跡で、リュウキュウジカの食性の違いを検出し、遺跡の立地に起因する植生環境の違いについて考察した。この成果については国際誌に論文として発表した。 2)植物食恐竜のマイクロウェアからの顎運動様式の推定、ならびに食性推定を行った。 2-1)白亜紀のアンキロサウルス科Jinyunpeltaの顎運動様式をマイクロウェアの線条痕の走行から推定した。Jinyunpeltaの歯牙の咬合面側では垂直方向の傷が、歯根側では水平方向の傷が観察され、垂直方向に下顎を挙上したのち、後方に牽引する、という二段階の咀嚼運動を行っていたと推定された。このことはアンキロサウルス類においてより複雑な咀嚼運動様式が、これまでに考えられていたよりも早くから獲得されていたことを示唆している。この成果は国際誌に論文として発表した。 2-2)草食恐竜の竜脚形類について、幅広い年代また産地の標本を用いて、マイクロウェアからの食性推定を行った。竜脚形類のマイクロウェアを、現生の食性既知のトカゲ類と比較したところ、樹上性の草食性のトカゲに類似しており、木本植物の葉を主体とする食性であったと推定された。また今回調べた竜脚形類では、マイクロウェアに明瞭な時代変化は認められなかった。この成果については現在、投稿論文化に向けて、追加データの取得を進めている。 2-3)ハドロサウルス類のマイクロウェアから食性推定を行い、その時代変化について検討した。これについては現在投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共焦点レーザー顕微鏡を用いたマイクロウェア分析については、分析対象の幅を広げており、その成果も論文として順調に公表されている。 房総のニホンジカの標本調査については、今年度も新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、調査が実施できなかったため、次年度に実施することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
房総のニホンジカの標本調査の実施が律速段階となっていたが、標本収蔵機関と調整して2021年度は実施できる見込みである。引き続きマイクロウェア分析に注力するとともに、ニホンジカ標本調査にかかる人員を追加して、調査速度を上げていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大を受けて、国内外の調査を予定通りに実施することができなかった。したがって、研究費を一部次年度に繰越し、次年度の調査に使用することとした。
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Research Products
(4 results)