2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18621
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
舞木 昭彦 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (00626343)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生物群集動態 / 複雑性 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物多様性の維持機構の解明に向けて、申請者は、主に生態系に存在する複雑性の役割について分析することを目標にしている。本年度では、研究の土台となる汎用性のある基礎的な生物群集動態モデルを構築することを目的に、研究を遂行した。しかし、思いのほかモデリングが進み、来年度以降の研究テーマに着手、および成果を挙げるまでに至った。第一に、基礎モデルをもとに、時間的複雑性と生態系の安定性の関係について分析を行った。生物は、一生涯にわたり自身の性質を変えていく。その劇的な例は変態だが、生物の多くは多少なりとも複雑な生活をおくる。このことは、生活史の途中途中で、相互作用相手及び属する生物群集が変化していくことを意味する。このような生活変化による時間的な複雑性が多種を含む複雑な生態系の安定性とどのような関わりがあるのかを分析した。その結果、生活史の複雑性を考慮すると、複雑な群集ほど、つまり多様な生物種で構成される群集ほど、共存が促進されることがわかった。第二に、空間的複雑性と生態系の安定性の関係について分析を行った。その結果、たくさんの生息地がそれぞれ結びついているほど、つまり生息地ネットワークが複雑であるほど、多様な生物種の共存が促進されることがわかった。2つの研究は、普遍的な概念である時空間の複雑さそのものが、従来の理論予測の「複雑な生態系ほど不安定になる」という、自然生態系のパタンとの矛盾を覆すことを示唆している。これらの成果のうちいくつかは、すでにNatureの姉妹誌であるScientific Reportsをはじめ、Nature Ecology and Evolutionなどで公表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、研究の土台となる汎用性のある基礎的な生物群集動態モデルを構築することを目的に、研究を遂行した。しかし、思いのほかモデリングが進み、来年度以降の研究テーマに着手、および成果を挙げるまでに至った。この理由は、当初予定したいた基礎モデルの構築が、申請者の先行研究を発展させることで飛躍的にモデリング速度が上がることに気づいたからである。また、これまでMathematicaで計算していた行列計算を、行列計算の速度が速いR言語で構築しなおすことで、劇的に計算速度が上がったことも、研究速度を上げた理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、思いのほか研究が進んだので、最終年度に予定していたテーマである、「群集ネットワークの時空間的ゆらぎと生態系の安定性の関係」についての分析に着手する予定である。従来の理論では、相互作用ネットワークは時空間的に変化しないと考えることが多いが、現実では、様々な要因により揺らいでいる。そこで、相互作用ネットワーク構造自体の時空間的な揺らぎが生態系の安定性と関係している可能性を明らかにすることが課題である。また、初年度の成果のなかで、まだ投稿論文になっていないものは速やかに投稿する予定である。同時に、余裕があれば、初年度から進めた生活史の複雑性や空間の複雑性と生物群集の安定性の関係が、「相互作用の種類の多様性」を含んだとしても頑健であるかどうかをテストしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初、PCのメモリの増築を考えていたが、プログラムの工夫により思いのほか計算速度が早くすることができ、予定していたメモリなどPCのパフォーマンス向上のための物品費の使用が少なくて済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、さらに複雑な計算をすることを予定しているため、昨年購入しなかったPCのパフォーマンス向上のための物品費の使用が増えることが考えられる。さらに、インパクトの高い、さらに投稿費が10万以上のオンラインジャーナルへの掲載が複数予定されており、それらに充てることを予定している。
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Research Products
(8 results)