2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18623
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 渉誠 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10771701)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 次世代シーケンサー / ゲノムワイドSNP解析 / 適応遺伝子 / 生態ニッチモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シロイヌナズナに最も近縁な野生植物ハクサンハタザオを対象とし、全ゲノム解析から検出される適応遺伝子の情報をもとに、現存する集団の新たな環境下における潜在的適応能力を推定することで、種が内包する適応力多様性の評価を目指す。初年度である平成28年は主に対象植物の現存集団の分布調査と、ゲノム解析用サンプルの採取を行った。標本情報などを参考に、現存する集団を探索したところ、新たに30集団を発見し、既知の集団と合わせて111地点の分布データを得た。このデータは北海道から九州まで、本種の国内における分布を網羅しており、今後の生態ニッチモデリングを進めていく素地として十分な精度を持つ。また、共同研究者から提供された韓国の個体を含め、各地点1個体、計112個体についてDNAの抽出、ゲノムライブラリ作成、次世代シーケンサーHiSeq2500によるゲノム解読を進めた。すでに80個体についてはゲノム解読が完了しており、今年度採取した個体の一部についてもゲノムライブラリ作成を進めている。さらに、北海道、岩手、石川、島根、熊本から選定した5地点については生体を人工気象器内で栽培し、クローンによる増殖も行った。栽培個体は春化処理を施すことで開花させ、集団間でのかけあわせを行い、F1種子を得た。今後もかけあわせを続け、様々な遺伝的背景を持つ個体の創出を目指す。かけあわせに用いた個体とその後代については今後異なる環境下における適応度を測定するとともに、ゲノム解読を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集団の分布調査は順調であり、本種の国内における分布をほぼ網羅することができたと言える。しかしながら、今年度採取した一部のサンプルについては採取時期が遅かったこと、採取した組織の量が足りなかったことから、質の高いゲノムライブラリを作ることができなかった。これらのサンプルについては平成29年度に再び採取を行うことで補完し、SNPデータベースの構築を予定である。室内における栽培実験は順調であり、一個体からクローン増殖によって、70株以上に株分けすることに成功した。これらのクローン株は適応度測定の際の反復実験に用いる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は再度サンプリングを行うとともに、DNA抽出、ゲノムライブラリの作成、次世代シーケンサーを利用したゲノム解読作業を済ませる。次世代シーケンサーから得られたデータをもとに、SNPデータベースを完成させ、取得済みのGIS情報と関連解析によって適応遺伝子を抽出する。また、栽培実験で得た株を様々な温度条件、乾燥条件で生育させ、適応度を測る。
|
Causes of Carryover |
生じた次年度使用額はごくわずかであり、予定通りの執行状況と言える。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた執行計画に沿って使用する。
|
Research Products
(2 results)