2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K18623
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 渉誠 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10771701)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 次世代シーケンサー / ゲノムワイドSNP解析 / 適応遺伝子 / 生態ニッチモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究が対象としているハクサンハタザオは、シロイヌナズナの最近縁種であり、ゲノミクス・エピゲノミクス・トランスクリプトミクスなど、様々な分子遺伝学的研究の対象となっており、野生植物としては世界的にも他に類を見ないレベルでの生物学的知見が蓄積されている。さらに、シロイヌナズナと異なり多家受粉によって繁殖を行い、日本全国はもとよりヨーロッパに至るまで様々な環境に生育するため、非常に高いレベルで多様性を維持している。本研究の目的は多様な環境に生育するハクサンハタザオの全ゲノム解析から検出される適応遺伝子情報をもとに、新たな環境下における潜在的適応能力を推定することで、種が内包する適応力多様性の評価を目指すものである。2年目となる平成29年は初年度にサンプリングが出来なかった地点およびゲノム解読に失敗した地点を補充することで、最終的に120地点にまで解析サンプルを増やすことができた。これは、本種の国内における分布を網羅しており、今後の生態ニッチモデリングを進めていく素地として十分な精度を持つ。また、生態ニッチモデリングに必要となる環境情報データベースの構築を進めた。農業環境技術研究所より提供された気象予測データ、傾斜や河川からの距離などのGISデータから、ハクサンハタザオの生育に深く関連していると思われる要素を抽出し、現代(1980~2000年)と将来(2080~2100年)の環境情報データベースを1キロメッシュの精度で構築した。このデータベースを使い、予備的に種の分布情報から生育適地予測をMaxEntで行ったところ、精度の高い在不在モデルを得ることができた。今後は環境適応を担う遺伝子の選定を進め、遺伝子型にもとづく分布予測を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年間にわたる野外調査の結果、本種の国内における分布をほぼ網羅することができ、本研究の最も重要な要素であるサンプリングがようやく完了した。サンプリングは初年度に完了させる予定であったため、ゲノム解析が予定よりも遅れている。現在は手持ちのデータで予備的に候補遺伝子の選択や生態ニッチモデリングを進めているが、あらかじめ解析方針を決定しておき、ゲノムデータが揃い次第速やかにとりかかれるように準備をしておく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは次世代シーケンサーを利用したゲノム解読作業を速やかに完了させる必要がある。ゲノムデータからSNPデータベースを完成させ、関連解析によって適応遺伝子を抽出する。地理的環境情報データの構築は完了しているため、生態ニッチモデリングについても最適な系を検討する。今のところモデリングにはMaxEntを運用しているが、多項ロジットによる適応遺伝子の分布予測についても解析を試みる。
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Causes of Carryover |
解析用サンプルの準備が遅れ、次世代シーケンサーを運用する分の研究費が一部余った。 サンプルの用意ができたため、予定通り次世代シーケンサー用の試薬に充てる。
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