2018 Fiscal Year Annual Research Report
A genomic investigation into the adaptive diversity of a wild Arabidopsis species
Project/Area Number |
16K18623
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 渉誠 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (10771701)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 次世代シーケンサー / ゲノムワイドSNP解析 / 適応遺伝子 / 生態ニッチモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
ハクサンハタザオは日本国内に広く分布する普通種である一方で、ゲノミクス・エピゲノミクス・トランスクリプトミクスなど、様々な分子遺伝学的研究の対象となっており、野生植物としては世界的にも他に類を見ないレベルでの生物学的知見が蓄積されている。また、近縁種であるシロイヌナズナとは異なり、多家受粉によって繁殖を行い、様々な環境に生育するため、非常に高いレベルで多様性を維持している。本研究の目的は多様な環境に生育するハクサンハタザオの全ゲノム解析から検出される適応遺伝子情報をもとに、新たな環境下における潜在的適応能力を推定することで、種が内包する適応力多様性の評価を目指すものである。平成30年度では、これまでに収集したハクサンハタザオの分布情報と、1キロメッシュの環境情報を用いた一般的なニッチモデリングを行った。その結果、ハクサンハタザオの生育適地は温暖化にともない現在よりも高緯度・高標高に移動することが示された。次に、ゲノム情報と環境情報のゲノムワイド関連解析(GWAS)によって特定した適応遺伝子の対立遺伝子(祖先型または派生型)の分布情報をもとにニッチモデリングを行った。ここでは生育適地予測に頻繁に用いられる、在/不在を扱うMaxEntではなく、多項ロジットを採用することで祖先型アリルのホモ/派生型アリルのホモ/両アリルのヘテロ/不在という選択肢を環境変数で説明した。その結果、多くの適応遺伝子で祖先型と派生型の対立遺伝子間で適地が異なり、温暖化に対する応答にも差が生じることが示唆された。この結果は、同じ種であっても遺伝的構成によって適地や気候変動に対する応答が異なることを示しており、種内における適応力多様性を評価する上で重要な指標になり得ると考えられる。
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