2017 Fiscal Year Annual Research Report
Reconstruction of the extinct Ezo wolf's diet to understand their ecological role in the past ecosystem
Project/Area Number |
16K18627
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
松林 順 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 特別研究員(PD) (30756052)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エゾオオカミ / 安定同位体 / 食性復元 / 絶滅種 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①同位体比分析により絶滅したエゾオオカミの食性復元を行うこと、②骨の成長層ごとの同位体分析手法を開発し、年ごとの食性の変化を調べる方法論を構築すること、③②の手法をエゾオオカミに適用して、食性の年変動を明らかにすることの3つを研究課題として挙げていた。 一つ目の課題は、北海道内の遺跡から出土した7個体分のエゾオオカミ骨試料を博物館等から提供いただき、炭素・窒素安定同位体比分析による食性解析、さらに放射性炭素同位体比分析による年代推定を行った。分析の結果、本研究に用いた試料は全て過去に死亡したエゾオオカミの骨であることが示された。また、7個体のエゾオオカミのうち5個体は陸上哺乳類を主食としていたが、2個体は海産物に強く依存した食性を示した。かつてのエゾオオカミは一部の地域個体群が河川に遡上するサケや海獣類を多量に捕食していたことが示唆された。ただし、これらの個体がアイヌに飼育されていた可能性も否定できない。 二つ目の課題である骨の成長層ごとの同位体分析手法は、20世紀末に死亡した複数種の哺乳類の大腿骨の放射性炭素同位体比分析によって妥当性の評価を行った。20世紀末は大気核実験によって放出された放射性炭素が急速に海水に吸収された時期であり、この時期の生物では放射性炭素同位体比を測定することで年単位で正確に年代推定を行うことができる。大腿骨を成長方向に10の切片に分割して放射性炭素同位体比を測定したところ、部位によって一様な同位体比のパターンが見られ、大腿骨には5年程度の同位体比の履歴が保存されていることが示された。以上より、骨の分析により年ごとの食性の変化を調べる方法論の確立という目標は達成された。 ただし、この手法は分析に必要な骨の量が多いため、貴重なエゾオオカミ標本に適用することはできなかった。したがって、三つ目の課題は達成することはできなかった。
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