2016 Fiscal Year Research-status Report
光照射パターンが葉の機能特性と炭素固定効率におよぼす影響
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16K18628
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
冨松 元 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 特別研究員 (70598458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境応答 / 光変動 / 高CO2 / 光合成 / 気孔コンダクタンス / 馴化 / シロイヌナズナ / 植物生理生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
光照射パターンの違いが植物の機能特性や光合成特性におよぼす影響について検討している。本年は、次の2項目について実施した。 1)LED光源を用いた光変動栽培システムの構築: 国立環境研究所にある大型生物環境調節室(通称エコトロン)内部に3つの植物栽培チャンバーを設置した。各チャンバーには、植物栽培用3色LED光源(RGB)を備え付け、光照射強度を波長ごとにコントロール出来るユニットを設置した。チャンバーの光照射は1台のパソコンによって一元管理し、連続照射時間と照射パターンをチャンバーごとに制御するシステムを構築した。 2)異なる光照射パターンが植物成長特性におよぼす影響評価: 今年度は、3つの異なる光照射パターンで栽培し(日積算光量子密度は同じ)、開花日数などのフェノロジー特性について調べた。供試植物には、シロイヌナズナの気孔開放型SL1-2株とその野生株Col-0株を用いた。栽培は、通常大気CO2濃度(約400ppm)において、長日(明期12H)と短日(明期9H)のそれぞれの条件下で、約3ヶ月間実施した。さらに、照射光を強光(約180μmolm-2s-1)と弱光(約9μmolm-2s-1)比率が2:1になるように割り振り、強光の連続照射が4時間の“長期パターン“(短日条件は3時間)、20分の“中期パターン“、2分の“短期パターン“の3処理とした。上記条件で栽培した結果、栄養成長から繁殖成長への切り替わり(花茎の伸長開始)時期は、日長や品種に関わらず、“長期パターン”個体ほど早かった。一方、成長速度(葉面積の展開速度)は、日長によって変化し、長日の時は“短期パターン“で速く、短日の時は“長期パターン“で速かった。このように、日積算光量子量が同じであっても光照射パターンの違いによって、植物のフェノロジー特性と成長速度が変化する事が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに導入した実験チャンバーのセットアップと栽培条件(日長、最大光強度、光波長の組み合わせ等)の設定に時間を要したが、当初計画していた実験は無事に終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度のデータ解析を詳細に解析し、必要に応じて再度の測定または栽培を行う。さらに今年度は、前年度と同じ照射パターン(3パターン)と供試植物(2種)で、CO2濃度のみ700ppmへと上昇させて栽培する。栽培した植物に対しては、前年度と同様にフェノロジー特性と成長特性に対する解析を実施する。また、①ガス交換計測と②成長解析に関する2年間の蓄積データを解析し、高CO2濃度環境が光照射パターンの効果に及ぼす影響についても検証を進める。さらに、③葉の生化学組成の分析と解析を進め、光照射パターンが植物の生理機能特性におよぼす影響メカニズムについて考察を進める。
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Causes of Carryover |
英文校閲を今年度行わなかったので次年度に回した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
英文校閲等に使用する。
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