2018 Fiscal Year Annual Research Report
Why are they active in both day and night?: Adaptive significance of cathemerality in primitive primates
Project/Area Number |
16K18629
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 宏樹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (90625302)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 周日行性 / 夜行性 / 昼行性 / 活動性 / 霊長類 / キツネザル / マダガスカル |
Outline of Annual Research Achievements |
昼行性化は霊長類や人類にとって、形態的な進化(視覚発達や脳・体サイズの大型化)だけでなく、複雑な群れや社会の発達につながるビッグイベントだったと考えられる。しかし、霊長類における昼行性の進化プロセスについては多くの謎に包まれたままである。マダガスカルに生息する原始的な霊長類チャイロキツネザル(Eulemur fulvus)は、霊長類の中でも稀な昼も夜も動く周日行性とよばれる活動性を示す。本研究ではチャイロキツネザルの活動性と環境要因の関係を調べることで周日行性の適応意義を明らかにし、霊長類における昼行性進化について理解を深めることを目的とした。 雨季と乾季が明瞭なマダガスカル北西部アンカラファンツィカ国立公園の熱帯乾燥林において、1年間の終日・終夜を通した行動観察と生態学調査を行った。チャイロキツネザルはどの季節も安定して夜間に活動していた一方で、日中の活動量は雨季に増加し、乾季は著しく低下した。雨季の日中は主に果実を食べ、乾季の日中は多肉質の葉を噛みしめて汁をなめる行動が目立った。昼夜の活動量の変動に対する生物学的・非生物学的な環境要因の影響を検証した結果、乾季の日中は低湿度と高気温によるストレスに晒される中で水分損失および体温上昇を回避するために活動を抑制し、葉食で水分を補給する行動戦略が示唆された。こうした環境ストレスから解放される雨季は、日中に活発に活動してエネルギー源となる果実を摂取していた。夜行性から進化した周日行性のチャイロキツネザルは、日中の環境ストレスによるリスクと資源獲得のメリットとのトレードオフの中で、季節的に夜から昼の世界への進出を図っていることが示唆された。日中のストレスに対する生理・形態学的な形質が昼行性霊長類には備わっているのだろうか?霊長類の昼行性化を理解するには、対象とする分類群やアプローチを広げて、さらに研究を進める必要があるだろう。
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Research Products
(5 results)