2016 Fiscal Year Research-status Report
古代ゲノム分析による関東古墳時代人の親族関係と遺伝的構造の解明
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16K18631
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
神澤 秀明 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究員 (80734912)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 古代DNA / 古墳時代 / 関東地方 / ミトコンドリアゲノム / 核ゲノム / 親族関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
関東地方の古墳時代人の遺伝的背景と親族構造を明らかにすることを目的として、東京都羽根沢台遺跡出土人骨のミトコンドリアゲノム分析と核ゲノム分析を行った。分析した6個体全てから、ミトコンドリアゲノムのほぼ全配列を決定し、ミトコンドリアゲノムから、同一墓穴に埋葬されている複数の個体間で母系系統で親族関係があることが明らかとなった。これまでの親族推定ではミトコンドリアDNAの部分配列に基づいていたが、全配列分析によって個体特異的変異も用いた推定であることから、信頼性は極めて高い。また、今回のミトコンドリアゲノム分析では、西日本縄文人の系統を示すハプログループM7a1aと渡来系集団の系統を示すハプログループD4(D4b2, D4j3, D4a2a)が検出された。これらの結果は、関東の古墳時代人は遺伝的に、渡来系集団と西日本縄文人の混血によって形成された集団の系統であることを示している。 次に、DNAの保存状態の良い個体を一個体選び、ヒトゲノムを濃縮後にHiSeq2500でシーケンスを行った。ヒトゲノムへのマッピングとフィルタリング後に、400万リード以上のユニークリードを取得した。集団比較解析に十分なデータが得られたことから、関東古墳時代人のゲノムデータを東アジア人集団と主成分分析で比較した結果、関東の古墳時代人は現代本土日本人のクラスターの中に含まれた。このことは、現代の本土日本人が持つ遺伝組成はおおよそ古墳時代には成立していたことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画したとおり、まずはじめに全個体のミトコンドリアゲノム分析を行い、そこから親族関係を推定した。それと同時に、コンタミネーションの割合を推定し、核ゲノム分析に適した試料であるかの判断を行った。いずれの個体でもコンタミネーションの割合は非常に低く見積もられたことから、特にDNAの保存状態の良い個体3個体のうち、1個体についてHiSeqによる核ゲノム分析を行い、関東の古墳時代人が現代本土日本人とどのような遺伝関係にあるのかを分析した。計画ではシーケンスまでであり、現代人との比較は平成29年度以降を計画していたが、予定よりも進んでいることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、同一墓穴内の複数個体の核ゲノム分析を行い、Y染色体と核ゲノムから親族関係の推定を試みる。特に、古代人においてY染色体から男系系統で親族推定をする試みは初めてであり、同一墓穴内の親族構造について、当時の社会構造を含めて考察することができる。また、羽根沢台遺跡出土人骨以外にも、関東地方草刈遺跡出土の古墳時代人骨の核ゲノム分析も行っており、別の遺跡とのあいだの遺伝関係を明らかにして、古墳時代の関東地方の遺伝的な背景をより詳細に分析することを試みる。
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Causes of Carryover |
旅費の使用額が申請時よりも低くなったことから、残額が生じた。残額分を消耗品に充てたが、端数が合わずに残額として残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年の学会発表および研究打ち合わせのための出張が多く必要と思われるので、そちらで計画的に使用する。
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