2017 Fiscal Year Research-status Report
オオムギの形質転換効率に関わる遺伝子座の特定と機能解析
Project/Area Number |
16K18634
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
久野 裕 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (70415454)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オオムギ / 形質転換 / 準同質遺伝子系統 / 再分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、安定して形質転換可能なオオムギ品種は「Golden Promise」(GP)に限られており、この制限が重要遺伝子の効率的な解析を妨げている。形質転換に必要な遺伝子を明らかにすれば、GP以外の品種での形質転換も容易になると考えられる。本研究は、オオムギの形質転換に必要あるいは有利な遺伝子を同定するため、形質転換が困難なオオムギ品種「Haruna Nijo」(HN)とGPとの交配後代を用いて、(1)オオムギの形質転換に必要なゲノム領域の絞り込みならびに(2)その機能解析を行うことを目的としている。これまでに、HNxGPのF2から得られた60の形質転換体(tHNxGP)を用いて、その染色体分離の歪みを検出することにより、オオムギの形質転換に必要あるいは有利な3つの遺伝子座TFA(Transformation Amenability)を同定した。昨年度は、tHNxGP を用いて、Illumina社Infiniumによる高密度マーカー解析を行い、1131の新規SNPsマーカーを得た。さらに、上記(1)(2)を遂行するための実験材料として、HNまたはGPを戻し交雑親としたBC2F1世代をそれぞれ育成し、得られたSNPsマーカーを用いてTFA遺伝子座が分離するような個体を選抜した。本年度は、BC2F2およびBC2F3と展開し、TFAを解析するための準同質遺伝子系統として整備した。BC2F2([HNxGP] xHNxHN)において、TFA領域のみGPで、それ以外のゲノムがほぼHNに置き換わった個体で形質転換実験を行った結果、GPと同程度の効率で形質転換体を得ることが出来た。このことから、TFAが形質転換に必須であることを証明できた。一方、再分化に関わる転写因子遺伝子のBaby Boom遺伝子およびWuschel2遺伝子を単離し、それらを過剰発現する形質転換オオムギカルスを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、BC2F2およびBC2F3を展開し、準同質遺伝子系統化を進めた。その中で、BC2F2を利用した実験において、TFAが形質転換に必要なゲノム領域であることを証明できた。同時に、TFA領域の絞り込みも行った。これらは当初の計画通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、育成した準同質遺伝子系統を用いて、形質転換能のQTL解析を行う。各系統ごとの (i)カルスの増殖率、(ii)再分化効率ならびに(iii)T-DNA導入効率などの項目を厳密に評価することにより、3つのTFAがそれぞれどのような働きをしているのかを明らかにする。同時に、TFAの原因遺伝子の絞り込みを行う。また、それらの表現型に関わる遺伝子の網羅的発現解析を予定している。
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Causes of Carryover |
計画では、新規マーカー作成のためのオリゴ合成に使用する予定であった。しかし、新規マーカの対象であるBabyboom遺伝子ならびにWuschel遺伝子の下流遺伝子の調査を進めていたが、解析に予想以上の日数がかかり、平成30年3月末までにオリゴを設計することが出来なかった。 次年度では、そのオリゴを設計・購入し、解析に用いる予定である。
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