2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18640
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小川 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 次世代作物開発研究センター 基盤研究領域, 研究員 (10456626)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 根圧 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
根は土壌から水や栄養分を吸収し、導管を介してそれらを地上部に送る。導管を介した物質輸送は蒸散流と根圧に依存し、蒸散流は気孔開閉により制御されることが知られるが、根圧の制御に関する分子機構はわかっていない。そこで私は、地上部切断時に滲出する導管液の量が根圧を反映するという作業仮説を立て研究に臨んでいる。 導管輸送能が成長にどのような作用をもたらすのかを明らかにするため、導管滲出液量とシュート生重量と根の乾燥重量を調査した。稲品種の「ルリアオバ」や「タチアオバ」を各10系統ずつに対し調査したところ、これらの3者の間に正の相関が見られた。この傾向は「ルリアオバ」や「タチアオバ」を含む6品種を6サンプルずつ調査した際にも見られた。このことから、導管輸送の活性化は成長の増進につながっている可能性が示唆された。 次に、導管輸送能に影響する遺伝子座を明らかにするため、採取できる導管液の量が異なることがわかっている「ルリアオバ」と「タチアオバ」に着目し、交雑系統(RT-RILs)を作出して遺伝解析を行うことにした。ところが、導管液滲出は温度の変化の影響を強く受けるためか、一度に多サンプルを反復し安定して試験することが難しいことがわかった。そこで、導管液量と正の相関を示すシュート生重量を調査し、イルミナのゴールデンゲートシステムにより解析した437のSNPsの遺伝子型情報を用いて遺伝解析を行ったところ、「ルリアオバ」アリルが正に働くQTLを2つ見出した。そのQTLの検証や導管輸送への効果の調査を行うため、戻し交雑系統の作出を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「ルリアオバ」と「タチアオバ」由来の交雑系統(RT-RILs)を82系統分、反復して安定して導管液を採取することを検討したが、うまくいかなかった。しかし、シュート生重量を代用してデータを取り、遺伝解析を行い2つのQTLを検出することができた。そしてそのQTLの検証のため、戻し交配を進めている。予想外のこともあったが、うまく修正して、研究を前に進められていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
検出できた「ルリアオバ」由来のQTLを検証するため、またそのQTLの導管輸送能への関与を明確にするため、そのQTLの領域以外を「タチアオバ」に置換した戻し交雑系統の作出を手掛け、中途系統の調査を行う。そして、QTLを絞り込む。また、世界のイネのコアコレクションや日本のイネ品種の導管液量を調査し、特徴のある系統を見出す。また、導管輸送に影響を与える外的因子を明らかにするため、導管液量や成分に対する環境ストレスや植物ホルモンの影響を調べる。
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Causes of Carryover |
遺伝解析により検出された「ルリアオバ」由来のQTLの検出や絞り込みに大量のプライマーやDNAポリメラーゼが必要であるが、それを次年度行うことにした。また、学会発表や参加を行わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝解析により検出された「ルリアオバ」由来のQTLの検出や絞り込みを進めるため、プライマーやDNAポリメラーゼを購入する。学会での発表を計画する。
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