2018 Fiscal Year Annual Research Report
Natural genetic variation of photosynthetic nitrogen use efficiency for rice improvement
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16K18643
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
安達 俊輔 東京農工大学, グローバルイノベーション研究院, 特任助教 (30717103)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 光合成 / 光呼吸 / 葉緑体 / C3 / 窒素利用効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は植物の葉の窒素含量当たり光合成速度(光合成窒素利用効率, PNUE)に着目し、1. 複数のイネ科植物のPNUEの自然変異の解明、2. この自然変異をもたらす生理要因の解明、3. 主要作物であるイネのPNUEの向上に結びつく新たな視点の獲得を目的として実施する。 これまでの研究実績は以下のように要約される。①C3植物に比較してC4植物のPNUEは概して高いことに加え、C3植物種間にも2倍程度のPNUEの変異が認められた。イネ科、非イネ科植物を含めた7種のC3植物種を用いた生理解析において、イネのPNUEが他のC3植物に比べて高いこと、イネの品種間にもPNUEに大きな差異があることを示した。②重回帰分析によって、PNUEの差異は炭酸固定速度と気孔伝導度の差異に強く影響される一方、葉肉伝導度の差異にはあまり依存しないことを示した。イネ(タカナリ)は窒素含量当たり炭酸固定速度・気孔伝導度が他の植物よりも大きく、このことが高いPNUEに関係していた。一方シロザの窒素含量あたり気孔伝導度はタカナリに比較して大きかった。③光呼吸の指標であるC*は窒素含量と負の関係が見られ、その関係性に種間差が認められなかった。ただしシロザのみ他の種に比較して著しく小さいC*を示し、窒素応答も認められなかった。④葉の内部形態の電子顕微鏡観察により、シロザの維管束鞘細胞内小器官の配置の特徴が、C4植物への進化過程段階であるC2植物のそれに類似していた。またGlycine decarboxylase complex含量が維管束鞘細胞に多く局在していた。以上の結果より、タカナリはC3植物のなかでは特に高いPNUEを有する一方、シロザの持つ気孔伝導度や光呼吸に関わる性質を導入することで、一層のPNUEの向上が期待できると考えられた。
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