2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18644
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
笠島 真也 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (30564463)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コムギ / きたほなみ / 草型 / 窒素代謝 / 多収要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道における秋播性コムギの基幹品種「きたほなみ」は、従来品種「ホクシン」よりも約1~2 割多収である。「きたほなみ」の多収要因として、直立葉群落のために、乳熟期以降の物質生産が高く維持されることが報告されていることから、登熟期における「きたほなみ」の高い同化能力と窒素代謝の関係について明らかにする必要がある。そこで、「きたほなみ」の多収要因を解明することを目標に、窒素代謝を解析した。材料の養成は、「きたほなみ」と「ホクシン」を用いて北見農業試験場の圃場で行った。調査は、出穂期から成熟期までの器官別・部位別の乾物重を測定し、CGR(個体群成長速度)を算出した。収穫後、収量および収量構成要素 (穂数、一穂粒数、千粒重) を調査した。器官別・部位別の窒素含有率をC/Nコーダを用いて測定した。収量は、「きたほなみ」が890kg/10a、「ホクシン」が749kg/10aであった。一穂粒数は、「きたほなみ」が「ホクシン」よりも15%有意に多かった。乾物重は、乳熟期以降に「きたほなみ」が「ホクシン」よりも大きく増加した。窒素含有率は、下位葉、葉鞘+稈において「きたほなみ」が「ホクシン」よりも高かった。一方、子実の窒素含有率をみると、「きたほなみ」が「ホクシン」よりも低かった。乳熟期以降のCGRは、「きたほなみ」が「ホクシン」よりも大きかった。以上より、「きたほなみ」は「ホクシン」に比較して、登熟期間における子実への窒素の転流が少なく、栄養器官の窒素含有率が高いため、群落下層の葉と葉鞘+稈の同化能力が高く維持された。その結果、乳熟期以降のCGRが高く、一穂粒数も多かったことが多収要因であると考えられた。葉身角度と受光量は、複数年度のデータが必要であることから、主成分分析による総合評価は見送った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「きたほなみ」の窒素代謝の解析に関しては、ほぼ予定した測定を終えることができ、予想通りの結果が得られたことから、おおむね順調に進展した。また、受光態勢の評価も予定通り行われた。ただし、受光態勢の総合評価は、単年度のデータでは不十分であることから、予備試験のデータも含め複数年度のデータを得る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、研究計画・方法ともに大きな問題もなく順調に進展している。しかし、予備試験の結果も考慮すると、収量の年次間変動が非常に大きいため、受光態勢の総合評価には、予定していた主成分分析に加え、年度ごとに評価することも検討する予定である。
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Causes of Carryover |
窒素分析に係る試薬および圃場試験に係る農業資材に見込んでいた支出がほとんどなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
圃場での形態形質の測定に要する時間が多いため、同時に複数のサンプルを測定できるように、測定機器(デジタルアングルメーター)や葉面積の測定機器の追加に関する研究費の支出を見込んでいる。
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