2016 Fiscal Year Research-status Report
病原菌エフェクターコレクションを活用した強度青枯病抵抗性遺伝子の同定
Project/Area Number |
16K18659
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Research Institution | 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所 |
Principal Investigator |
中野 真人 岡山県農林水産総合センター生物科学研究所, その他部局等, 流動研究員 (60756708)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 青枯病 / 病害抵抗性 / サリチル酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
青枯病菌はトマトやトウガラシ等のナス科作物に病害を引き起こす土壌伝染性の植物病原細菌であり、土壌深部や水中でも長期間生存できる。そのため、輪作による耕種的防除や農薬を用いた化学的防除の効果は限定的であり、有効な防除法の確立が求められている。一般的に、植物病原体に対する防除法としては、病害抵抗性品種の利用が農業現場では有効である。しかしながら、ナス科作物の青枯病抵抗性は量的遺伝子支配であるために有用な形質を栽培用品種へ集約することが難しく、抵抗性品種の開発が遅れている。本研究では、青枯病菌のエフェクター遺伝子コレクションを用いて、強度の青枯病抵抗性を示すトウガラシから抵抗性遺伝子を同定するとともに、当該遺伝子が青枯病防除に利用可能かどうかを検証する。 本年度、青枯病抵抗性育種に向けて青枯病抵抗性を示すトウガラシの選定を行った。青枯病抵抗性を有するトウガラシを探索するために、国内外から入手したトウガラシ系統に青枯病菌を接種し、萎凋症状の進展を観察した。国内で食用に栽培されているトウガラシ系統の多くは青枯病菌接種7日後までに枯死し、青枯病抵抗性が認められなかった。一方、東南アジア由来のトウガラシ野生系統では萎凋症状の進展が顕著に遅延し、青枯病菌に対して非常に強い抵抗性を示した。また、本トウガラシ野生系統は宿主範囲や生理的性質の異なる複数の青枯病菌株に対して強度抵抗性を示したことから、青枯病抵抗性遺伝子資源として利用価値が高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トウガラシ野生系統が有する抵抗性メカニズムを明らかにするために、青枯病菌を接種した栽培系統と野生系統から継時的にmRNAを単離し、リアルタイムPCRを用いて防御関連遺伝子の発現パターンを解析した。野生系統では、栽培系統と比較して解析した全ての防御関連遺伝子が速やかに発現するとともに、長く持続することが明らかになった。野生系統において発現量が増加した防御関連遺伝子の多くがサリチル酸情報伝達経路のマーカー遺伝子であることから、野生系統の強度青枯病抵抗性にサリチル酸が関与すると考えられた。本年度、強度青枯病抵抗性を示すトウガラシを見出すとともに、当該トウガラシの有する抵抗性の特徴付けを行うことができたことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の解析から、強度青枯病抵抗性を示すトウガラシ野生系統を見出すとともに、本抵抗性の誘導にサリチル酸情報伝達経路の関与が示唆された。今後の研究では、当該トウガラシが認識する非病原力因子を同定するために、アグロバクテリウムを介して青枯病菌エフェクターをトウガラシ葉で発現させ、過敏感細胞死を誘導するものを探索する。また、当該トウガラシの抵抗性誘導にサリチル酸が関与するかを明らかにするために、ウイルス誘導ジーンサイレンシング法によりサリチル酸情報伝達因子を抑制し、強度青枯病抵抗性に与える影響を評価する。
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Causes of Carryover |
研究機関所有の実験機器等を利用したため、物品費が当初予定していた額より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験機器の一部について、経年劣化による消耗が認められることから、これら機器の購入に充てる。
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