2017 Fiscal Year Research-status Report
化合物アレイを用いた拮抗作用を示さない植物ホルモン受容体結合化合物の探索
Project/Area Number |
16K18662
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
由田 和津子 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員 (50536480)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 植物ホルモン / ケミカルバイオロジー / バイオプローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は周りの環境からの刺激に応答して植物ホルモンを生合成し、様々なストレスに対する防御機構を発現させる。植物ホルモンはその受容体と相互作用することにより、受容体とタンパク質の相互作用を変化させ、下流のシグナル伝達を開始させる。植物ホルモン受容体には複数のホモログが存在することが多く、各々の機能分化について未だ不明瞭な点が多い。また植物ホルモンのシグナル伝達は互いにクロストークすることもわかっているが、その詳細な分子機構は未だ明らかになっていない。そこで、ケミカルバイオロジーの手法を用いて植物ホルモン受容体に結合する化合物をバイオプローブとして用いることにより受容体機能の解明を目指す。 当研究グループではケミカルアレイを用いたスクリーニングによりアブシジン酸受容体のアンタゴニストRK460を単離し(Ito et al., 2015)これらの立体異性体を合成した。また、シロイヌナズナの14種のアブシジン酸受容体のうち、11種類の組換えタンパク質を精製することができたため、RK460関連化合物の受容体特異性を評価し、立体異性体による受容体特異性の違いを明らかにした。このような受容体選択性のあるアンタゴニストは植物ホルモンシグナル伝達系の解析のための有用なバイオプローブとなることが期待されたため、強い活性の見られた化合物について構造展開を行った。 また理研NPDepoライブラリーのスクリーニングによりアブシジン酸受容体と結合するPP2Cタンパク質の活性を阻害する化合物が新たに見いだされ、これがアブシジン酸だけでなくジャスモン酸応答遺伝子にも影響を与えることが遺伝子発現評価により明らかとなった。この化合物が両植物ホルモンシグナル伝達系を活性化する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アブシジン酸受容体を用いたケミカルアレイスクリーニングにより単離されたRK460について、新たに精製に成功した2種の受容体と合わせて11種のアブシジン酸受容体を使用した詳細な特異性試験を実施し、RK460の立体構造活性相関が明らかとなった。これよりさらなる構造展開へと研究を発展させている。 一方、アブシジン酸シグナル伝達系の負の制御因子であるタンパク質脱リン酸化酵素(PP2C)のひとつであるHAB1活性を指標としたスクリーニングにおいて理研NPDepoライブラリーより、活性を示す化合物を得た。この化合物をシロイヌナズナに処理したところ一部のアブシジン酸関連遺伝子に加えて、ジャスモン酸応答性遺伝子の発現が上昇する事を見出した。この化合物はアブシジン酸、ジャスモン酸の両ストレス応答ホルモンシグナル伝達に影響を及ぼすことが期待され、さらに調査を進めている。 他の植物ホルモン受容体の解析に関し、組換えタンパク質が不溶ないしは収量が少ないため、発現誘導条件と精製方法に関して課題が残る。
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Strategy for Future Research Activity |
RK460の立体異性体に関して、植物に処理したときの安定性ないしは受容体特異性を考慮した構造展開を進める。合成化合物の受容体特異性に関しても試験を実施し、アブシジン酸アンタゴニストの構造活性相関の知見を蓄積する。同時に植物体への影響についても調査する。 植物ホルモンシグナル伝達活性化の評価系について、ストレス応答性プロモーター:レポーター遺伝子の形質転換植物の利用に加えて、より広い範囲での遺伝子発現調査ができるようにRT-qPCRによる評価も導入する。 可溶化困難または収量の低い受容体組換えタンパク質に関しては、精製用タグの検討または、解析する受容体の数を限定して無細胞発現系の利用を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度までに行った研究では、遺伝子クローニング、組換えタンパク質精製に際して安価な方法で実施することができた。また、ケミカルアレイ実験を予定していたが、組換えタンパク質が得られず保留となっている。これらの理由により、次年度への繰越金が生じた。 次年度の費用は、分子生物額実験(遺伝子クローニング、組換えタンパク質精製関連試薬、キット類)、生化学試験の試薬・キット類の消耗品費、またRK460の活性評価、遺伝子発現調査にかかる費用(RNA精製キット、逆転写酵素、リアルタイムPCR用反応試薬)に充てる予定である。 また、論文投稿費用、英文校閲費用、学会参加費用にも使用する。
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