2016 Fiscal Year Research-status Report
金属輸送体ZIP13が関わる花粉管伸長・破裂制御機構の解析
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16K18666
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河内 美樹 名古屋大学, 高等研究院, 准教授 (40625125)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 亜鉛輸送体 / ZIP / 花粉菅伸長 / マンガン輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究でシロイヌナズナのZIP13は成熟花粉及び花粉菅のゴルジ体で発現すること、酵母異種発現系解析よりマンガンと亜鉛を輸送する可能性が高いこと、そしてZIP13欠損株は高温ストレス下で稔性が低下することを明らかにしてきた。 in vitro花粉菅伸長実験より、ZIP13が欠損すると花粉菅の先端が異常な破裂を起こすことから、 ZIP13は正常な花粉菅の伸長と破裂の制御に重要な役割を果たしていると推測された。 平成28年度は、ZIP13の欠損株で見られた異常な花粉菅先端の破裂が、花粉菅内のマンガン濃度の低下、亜鉛濃度の低下、どちらに起因するものかを明らかにするために、花粉菅内の亜鉛濃度を膜透過性の亜鉛蛍光プローブZinpyr-1を用いて観察を試みた。しかし、花粉をZinpyr-1で処理すると花粉菅の先端の破裂が起こり、花粉菅内の亜鉛濃度をモニターすることはできなかった。Zinpyr-1は亜鉛特異性が高いことから、花粉菅内の亜鉛が Zinpyr-1と結合して、亜鉛欠乏状態になったために花粉菅先端の破裂が起こったと推測される。この結果は、ZIP13欠損花粉で見られた花粉菅先端の異常な破裂は、亜鉛欠乏に起因する可能性が高いことを示唆している。 また、ZIP13ヘテロ接合株を用いた遺伝率の解析から、ZIP13欠損花粉は野生型の花粉と競合すると受精に不利であることも明らかになった。さらに、オウンプロモーター制御下で GFP融合ZIP13を発現させ、ZIP13欠損花粉の相補実験も行なった。 GFP融合ZIP13は花粉菅のゴルジ体で発現すること、 GFP融合ZIP13を発現させると花粉菅先端の異常な破裂は起こらず、が野生型植物の花粉と同程度の花粉菅伸長を示すことが確認された。 本研究より、ZIP13欠損株で見られた異常な花粉菅先端の破裂が、確かにZIP13欠損によるものであることが相補実験から実証され、そしてその原因が花粉菅内の亜鉛濃度低下である可能性が高いことが明らかかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、花粉菅先端の破裂が、マンガンと亜鉛の濃度変化のどちらに起因するものであるかを明らかにするために、亜鉛蛍光プローブ Zinpyr-1を用いて花粉菅内の亜鉛濃度をモニターし、亜鉛濃度に変化があるかどうか調べる予定であったが、亜鉛蛍光プローブZinpyr-1を処理した時点で花粉菅の先端の破裂が起き、花粉菅内の亜鉛濃度をモニターすることはできなかった。しかし、この予期せぬ結果から、花粉菅の破裂が亜鉛濃度低下による可能性が高いことが明らかとなり、当初の研究目的は達成された。花粉菅内の亜鉛濃度のモニターについては、亜鉛との親和性がZinpyr-1よりも低い亜鉛蛍光プローブを複数入手して、解析に使えるプローブの選定を進めている。また、ZIP13ヘテロ接合株を用いた遺伝率の解析から、ZIP13欠損花粉は野生型の花粉と競合すると受精に不利であることも明らかとなった。さらに、オウンプロモーター制御下で、GFP融合ZIP13を発現させることで、ZIP13欠損株の相補にも成功し、おおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
酵母異種発現系解析ではZIP13が亜鉛とマンガンを輸送する可能性が高いことが示されている。今年度までの研究成果からは、花粉菅先端の異常な破裂が、花粉菅内の亜鉛濃度低下に因るものである可能性が高いことが示されたが、マンガンの影響については不明のままである。今後はZIP13欠損花粉で見られた花粉菅の破裂が、亜鉛やマンガン添加によって相補するかどうかについても、当初の研究計画に加えて調べる予定である。その他の実験については、当初の実験計画通りに進める。
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Causes of Carryover |
計画時点は1,100千円の植物栽培人工気象機を購入する予定であったが、研究費配分時点で減額があったため、試薬など消耗品購入費が不足することを懸念して、植物栽培人工気象機を断念したことが、計画と使用額に差が出た主な原因です。 また、アメリカで開催される国際会議に出席する予定で旅費を計上していましたが、健康上の問題から飛行機に乗ることができなくなり、当初予定していた国際学会に参加できなかったことから、旅費についても予定よりも使用額が少なくなりました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は、計画した実験の遂行に必要な、生化学試薬や分子生物学試薬、プラスチック器具、ガラス器具などの消耗品に用いる。その他については、計画的に研究を遂行し、計画通りに研究費を執行する。
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Research Products
(7 results)