2016 Fiscal Year Research-status Report
ミコール酸含有細菌が刺激する放線菌の二次代謝産物生産の分子機構と普遍性
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16K18673
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅水 俊平 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (90709057)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 微生物間相互作用 / 放線菌 / ミコール酸含有細菌 / 二次代謝 / 接触依存性相互作用 / 抗生物質 / 網羅的転写解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではモデル放線菌Streptomyces coelicolor A3(2)とミコール酸含有細菌(Tsukamurella pulmonis TP-B0596など)の接触を介した作用による、S. coelicolor の二次代謝産物(RED など)の生産活性化機構を分子レベルで明らかにすること、また同様の接触様式による微生物間の他者認識機構の普遍性を明らかにすることを最終目的とした研究の一環として以下の実験を遂行した。 Streptomyces coelicolor A3(2)とミコール酸含有細菌の相互作用に関して、申請書作成時までに行った網羅的転写解析において見いだされた変動遺伝子に関して、いくつかの遺伝子破壊株を作製し、放線菌の色素生産応答性を確認する実験を行った。しかしながら、期待する表現型形質をいずれも示さなかった。そこで重イオンビームを用いた放線菌突然変異株ライブラリーを作製し、その内15万コロニーをスクリーニングし、約130個の非応答性株の選抜に成功した。また、より詳細な放線菌の遺伝子発現変動を調べるために、経時的なRNA-seq解析を行い、発現遺伝子の動的な変動を観察した。 舳倉島由来自然分離株とMACB の相互作用に関して、自然界より、放線菌とミコール酸含有細菌の組み合わせで分離された二組について高分解能質量分析器を用いて網羅的代謝産物解析を行った。分子ネットワーク解析などから、特異的に生産される代謝産物を同定した。また走査型電子顕微鏡などを用いた観察から、その共凝集様の相互作用様式を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Streptomyces coelicolor A3(2)とミコール酸含有細菌の相互作用に関して、申請書作成時までに行っていた網羅的転写解析において見いだされた変動遺伝子に関して、いくつかの遺伝子破壊株を作製し、放線菌の色素生産応答性を確認する実験を行った。しかしながら、期待する表現型形質をいずれも示さなかった。応答に関与する遺伝子が変動を伴わないもの(二成分制御系の膜蛋白質など)であること、また、二つ以上が同時に関与する可能性が示唆された。そこで重イオンビームを用いた放線菌突然変異株ライブラリーを作製し、その内15万コロニーをスクリーニングし、約130個の非応答性株の選抜に成功した。二次代謝産物の生産能力、形態や一次代謝への影響のないものを選抜し、8株の優良候補株を選抜に至っている。また、より詳細な放線菌の遺伝子発現変動を調べるために、経時的なRNA-seq解析を追加で行い、発現遺伝子の動的な変動を観察し、解析を進めている。 舳倉島由来自然分離株とMACB の相互作用に関して、自然界より、放線菌とミコール酸含有細菌の組み合わせで分離された二組について高分解能質量分析器を用いて網羅的代謝産物解析を行った。分子ネットワーク解析などから、複数の特異的に生産される代謝産物のイオンの同定に至った。また走査型電子顕微鏡などを用いた観察から、その共凝集様の相互作用様式を観察し、現在接触依存性の刺激により起こる代謝変動の解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
Streptomyces coelicolor A3(2)とミコール酸含有細菌の相互作用。 重イオンビームを用いた放線菌突然変異株ライブラリーを作製し、その内15万コロニーをスクリーニングし、約130個の非応答性株の選抜に成功した。二次代謝産物の生産能力、形態や一次代謝への影響のないものを選抜し、8株の優良候補株を選抜に至っている。この8株を含めた非応答性株を選抜し、ゲノムリシーケンス解析を行い、変異点を同定する予定である。さらに同定した変異遺伝子に関して、相補実験、組換え破壊実験を行い、遺伝学的形質と表現型について詳細に調査する。 舳倉島由来自然分離株とMACB の相互作用。 走査型電子顕微鏡などを用いた観察から、その共凝集様の相互作用様式を観察できた。このことから自然界より放線菌とミコール酸含有細菌の組み合わせで分離された二組についてさらに二層式フラスコ培養を組み合わせた培養抽出物に関して比較網羅的代謝産物解析を、分子ネットワーク解析などを用いて行い、二種類の細菌が混ざった状態でのみ特異的に生産される代謝産物の精製・構造決定を行う予定である。
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