2017 Fiscal Year Research-status Report
放線菌の二次代謝はゲノムDNAの高次構造から理解できるか?
Project/Area Number |
16K18674
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大塚 淳 東京医科歯科大学, 教養部, 非常勤講師 (60597136)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放線菌 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌 Streptomyces griseusは転写因子AdpAによって抗生物質等の有用物質生産に必要な遺伝子群の発現をコントロールしている。AdpAは10塩基長の曖昧な塩基配列のパターンを認識し、ゲノムDNAに結合することが知られているが、二量体で機能するときの認識機構については不明な点が多い。本研究では、AdpA結合部位とその周辺の塩基配列に着目し、AdpAの認識機構を明らかにすることを目的としている。 昨年度に確立したモデル(AdpAが認識・結合する塩基配列のパターン)では説明することができなかった、既知の結合配列についても特徴を説明できるよう、モデルの改善を試みた。具体的には、単量体AdpAが10塩基長の認識配列との結合において、塩基配列に要求する条件に絞ってモデルの改善を試みた。10塩基長の認識配列の後半に見られる特徴に絞って分析を進めた結果、base step(DNAの連続した2塩基対のこと)が形成しうるコンホメーション(Travers 2012に詳しくまとめられている)によって、DNAとAdpAの結合力を説明することができた。塩基配列から結合力(ゲルシフトアッセイで示されたpIC50の値を用いた)を予測したときの予測精度は、相関係数R^2 = 0.97であり、研究者が期待していた精度を大きく上回った。この予測モデルに基づくと、10塩基長の認識配列が形成するDNAの高次構造の特徴は次の通りである:後半部分は湾曲した構造が維持される傾向があり、前半と後半の境界で構造変化を起こしやすい傾向がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の本研究で示されたことの一つに、過去にAdpAとその認識配列に関して得られていた知見だけではAdpAの結合様式を説明できない可能性があるということが挙げられる。一方で、本研究はタイトルに示された通りDNAの高次構造に着目してAdpAの結合様式を説明するという過去に無かった切り口で研究を展開する。 本年度の「研究実績の概要」で述べた通り、新しい切り口によってAdpAの結合様式に関する部分的なモデルを構築することができ、研究者の期待を上回る成果となった。本研究において大きな進展があったと考えている。しかしながら、ここに至るまでには膨大な条件検討が必要であり、費やした時間もまた研究者の予想を大きく上回ったことから、順調とはいいがたいと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、放線菌S. griseusのAdpA結合部位の候補を探索し、評価する。AdpAが認識する塩基配列のパターンの推定を行う際には、本年度に成功を収めたbase stepに着目した方法を積極的に活用する。シミュレーションによる検証と併せることにより、AdpAの認識配列に潜むパターンを汎用的なモデルとして提唱できるものと期待している。 立案したモデルの信憑性を高めるために、近縁の放線菌においても同じモデルを適用することができるか否かという検証を行いたい。また、同じくモデルの信憑性を高めるために、研究対象としているゲノム上の領域がとり得る高次構造をDNAラダーアッセイ等の実験によって推定したい。
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Causes of Carryover |
(理由)研究の一部において研究者が予想できなかった結果が得られたことから、研究計画を微修正した。それに伴い、平成29年度に計上した物品費の一部および旅費・その他の費用を平成30年度に繰り越すことで、研究全体の進展を維持することとした。
(使用計画)シミュレーションなどのデータのバックアップに必要な消耗品の購入費用、電気泳動などの実験に必要な消耗品の購入費用、および研究成果発表に伴う諸経費として使用する予定である。
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