2016 Fiscal Year Research-status Report

基質特異性の改変によるDDT初期分解経路の構築

Research Project

Project/Area Number	16K18685
Research Institution	Tokyo University of Marine Science and Technology
Principal Investigator	岡井公彦東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (00596562)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords	構造解析 / 基質改変
Outline of Annual Research Achievements	残留性有機汚染物質POPs（Persistent Organic Pollutants）は毒性が強く、生物蓄積性もあることから人の健康や環境に悪影響を及ぼすことが懸念されており、協調した国際的な廃絶、削減が求められている。その中で意図的に製造された有機塩素系農薬は製造・販売が禁止された後、埋設による処分が実施され、容器の腐食等による周辺地域や海への拡散が危惧されている。意図的に製造された化合物の中で2番目に埋設量の多いDDT（dichloro diphenyl trichloroethane）は分解菌の報告例はあるものの、分解経路については未知のままであり、実用レベルで利用するための酵素の改良ができない状況にある。近年、HCH分解酵素群の1つである脱塩化水素酵素LinAがDDTの分解にも応用でき、さらにPCB分解酵素群（EtbAa2-Ab2、BphB、EtbC）と組み合わせることでDDTの環を開裂できる可能性が示された。本研究ではその中で最上流の分解にかかわるLinAとEtbAa2-Ab2の酵素を対象としてDDTの初期分解経路の構築を目的としている。本年度は以下の2点の研究を進めた。 ①脱塩化水素酵素LinAはポケットの入り口付近のアミノ酸を変異させ、マルチプレートリーダーを用いた活性測定によるスクリーニング法を確立した。 ②酸素添加酵素EtbAa2-Ab2は大腸菌を用いた発現系を構築し、アフィニティとゲルろ過クロマトグラフィーを用いて高純度で均一性の高い蛋白質まで精製した。精製したタンパク質は市販のスクリーニングキットを用いることで結晶を得ることに成功した。得られた結晶は最適化を行い、R-AXISで9Å分解能を与えた。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason A)脱塩化水素酵素LinAの基質特異性の改変ポケットの入り口付近のアミノ酸を変異させ、マルチプレートリーダーを用いた活性測定によるスクリーニング法を確立した。進化工学による改変では平均2アミノ酸程度に変異が入るようにPCRで導入率を調節して無数の改変タンパク質の遺伝子を作成するところまでは至っていないものの、スクリーニング法を確立したことから十分に進捗が期待できるものと考えている。 B)酸素添加酵素EtbAa2-Ab2の精製・結晶化大腸菌を用いた発現系を構築し、高純度で均一性の高い蛋白質まで精製した。更に精製した蛋白質を用いてスクリーニングを行い、9Åの分解能を与える結晶を取得することに成功し、当初の予定より進捗している。
Strategy for Future Research Activity	A)改変LinAの立体構造解析平均2アミノ酸程度に変異が入るようにPCRで変異導入率を調節して無数の改変タンパク質の遺伝子を作成する。マルチプレートリーダーを用いた活性測定により、DDTを分解できるLinAをスクリーニングする。改変体は結晶化を行い、得られた結晶から構造を決定し、wild-typeの構造（既に決定済み）と比較する。 B)酸素添加酵素EtbAa2-Ab2の立体構造解析結晶を更に最適化し、放射光施設Photon Factoryでデータ取得を行う。取得したデータは研究室のパソコンで処理し、立体構造を決定する。
Causes of Carryover	本年度予定していた進化工学用の遺伝子操作キット、結晶化スクリーニングキット、蛋白質精製用の樹脂の使用量が予想より少なく、次年度に必要とすることになったため。
Expenditure Plan for Carryover Budget	進化工学用の遺伝子操作キットを購入してLinAの基質改変に、結晶化スクリーニングキットを購入して改変体LinA及びEtbAa2-Ab2の結晶化を行う。また、放射光施設PF（Photon Factory）への旅費や謝金への使用を計画している。