2017 Fiscal Year Research-status Report
コケ植物で機能する原始ジベレリン様成長制御物質の構造と生合成経路の解明
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16K18693
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 翔 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (30755955)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヒメツリガネゴケ / 天然物有機化学 / 植物成長調節 / ジベレリン / カウレン |
Outline of Annual Research Achievements |
コケ植物の分化制御に関わるカウレン酸(以下、KA)の代謝物質の同定と生合成経路を目的として、機器分析を用いた代謝産物の検出と生合成酵素遺伝子の探索を展開した。 KA合成能欠失コケ変異株の細胞分化が抑制される形質がKAの投与で回復する応答を指標として、昨年度までにKAよりも極性の高い活性代謝産物を確認し、LC-MS/MSを用いてそのKA代謝産物が検出できることを確認した。今年度は引き続きGC-MSにおいてもKA代謝産物を分析し、誘導体化することで検出に成功した。KA代謝産物のマスフラグメントと類似のデータが報告されていたため、その化合物を入手して直接比較したところ、KAの3位に水酸基が付加したent-3β水酸化カウレン酸(3OH-KA)であると同定することができた。3OH-KAが生体内で生産されている確証を得るため、安定同位体標識したKAを調製して投与試験に供したところ、標識3OHKAへの変換を確認した。さらに、これまでの追跡試験と同様に3OH-KAからの活性代謝産物を追跡したが、確認することはできなかった。 生合成酵素遺伝子は次世代シークエンサを利用したトランスクリプトーム解析で探索している。昨年度絞り込んだ複数の候補遺伝子のうち一つの組換え酵素がKAを基質として変換反応を触媒する酵素であった。変換物を酵素合成により調製してNMRで解析したところ、ent-2α水酸化カウレン酸(2OH-KA)として構造を矛盾なく決定できた。2OH-KAは細胞分化を誘導せず、KAからの活性を持つ代謝産物では無かったがコケの生活環で生産される物質であることを確認した。生体内での機能を解析するため作出した2OH-KA合成酵素欠損変異体は、野生株より細胞分化が進行している形質が認められ、2位の水酸化反応は不活性化反応であることを明らかとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
機器分析を用いたカウレン酸代謝産物の検出と、その代謝産物の同定が計画通りに進行した。生合成酵素の探索においても不活性化酵素を同定し、その酵素変換物の構造も決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はKA処理区と無処理区由来のRNAサンプルを次世代シークエンサで解析した。並行して実施していた「もの取り」から3OH-KAを同定することができたため、3OH-KAを処理したサンプルを用いて3OH-KA合成酵素遺伝子、さらに受容体因子の探索・機能解析を行い、3OH-KAが活性型の最終産物であることを結論づけたい。
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Causes of Carryover |
生合成酵素遺伝子、受容体因子探索のためのトランスクリプトーム解析を実施予定である。in vitro、in pantaでのそれら遺伝子の機能解析を行うための物品費も計上する。
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Research Products
(13 results)