2016 Fiscal Year Research-status Report
ガングリオシド修飾による高次機能化細胞培養基材の開発
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16K18694
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
今村 彰宏 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (30610951)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖鎖 / ガングリオシド / シルクフィブロイン / 有機合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
28年度前半は,研究実施計画に従ってガングリオシド誘導体の化学合成を遂行した。ターゲットとしたガングリオシドは,その糖鎖部分のみで神経突起伸展活性を発現する棘皮動物由来のLLG-3とし,収斂的合成戦略に基づいて合成した。まず,非還元末端側三糖を構築するために,シアリルガラクトース二糖を定法により合成した後,非還元末端のシアル酸を脱水縮合法により導入した。結果として,目的とする三糖誘導体を必要十分量合成することに成功した。次に,還元末端グルコース誘導体として,p-ニトロフェニルグルコシドを合成した。 28年度後半は,シルクフィブロイン(SF)への糖鎖導入を検討するための予備実験を実施した。研究計画に従い,SF中のチロシン残基への糖鎖導入を志向した。まず,チロシンのモデルとして,p-クレゾールを用いて,先に合成したp-ニトロフェニルグルコシドとのジアゾカップリング反応を検討した。しかし,結果は芳しくなく,これはジアゾニウム塩の安定性に問題があると判断し,糖鎖とSFを直接結合させることは困難であると判断した。そのため,安定なジアゾニウム塩を形成させることが可能な分子設計を立案し,糖鎖とSFをリンカーを介して結合させる戦略に変更した。その結果,モデルのp-クレゾールとリンカーのジアゾカップリング反応を高収率で達成することに成功した。次に,チロシン残基を用いてジアゾカップリング反応を遂行し,チロシンでもクレゾールと同様な結果が得られることを確認した。 また,戦略の変更にともない,糖鎖の還元末端グルコースのアグリコンの設計も変更した。すなわち,リンカーの末端に導入したアジド基とクリック反応によって化学選択的に反応するアルキン部位を持つ構造とした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究方法の年次計画に従って,H28年度前半にガングリオシド糖鎖の化学合成を実施し,H28年度後半にフィブロインへの糖鎖導入を検討した。ガングリオシド糖鎖は計画通り必要量の合成を完了した。フィブロインへの糖鎖導入に関しては,モデル実験を行った結果,糖鎖とフィブロインを直接結合させる方法は適当でないことが判明し,それぞれをリンカーを介して間接的に結合させる戦略に変更した。この変更に伴い,糖鎖側の分子設計に変更の必要が生じたが,計画立案時点で対策を講じていたため,大幅な変更の必要はなかった。モデル実験の結果を踏まえて,糖鎖とフィブロインの結合方法の目処がたったことから,現在,フィブロインへの糖鎖導入を検討している。 以上の結果は年次計画で想定した内容に沿っており,研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は糖鎖の化学合成,糖鎖とフィブロインの結合方法の検討を行った。H29年度は,年次計画に従って,まずフィブロインにリンカーを導入し,その後,糖鎖をクリック反応によってフィブロインへ導入する。次に,糖鎖-フィブロイン複合体の物性を確認した後,これを細胞培養基材へと誘導する。二次元・三次元の細胞培養基材を作製後,細胞(PC12, SH-SY5Yなど)を実際に培養し,細胞の形態変化を観察し,細胞応答の評価をする。
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Research Products
(1 results)