2016 Fiscal Year Research-status Report
植物寄生性センチュウによる宿主認識行動の化学的制御
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16K18695
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
伊藤 晋作 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (70608950)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物寄生性線虫 / ダイズシストセンチュウ / 誘引物質 / 孵化促進物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は植物寄生性線虫の行動を制御する化合物を見出すことを目指している。具体的にはダイズシストセンチュウを用いて、孵化とその後の宿主認識に関わる誘引行動に着目し、それらの行動を撹乱、制御できる化合物を宿主植物およびケミカルライブラリー中から探索する。本年度はダイズシストセンチュウの孵化促進物質および誘引物質のケミカルライブラリーからのスクリーニングおよび宿主植物からの各物質の探索、精製を行った。そこで孵化促進物質、誘引物質としてそれぞれ複数の物質を見出すことができた。見出された孵化促進物質の中で1,10-Phenanthrolineに関して、すでにダイズシストセンチュウの孵化促進物質として知られているグリシノエクレピンAと孵化促進活性を比較したところ、活性を示す濃度が100 μM程度と弱いものの、グリシノエクレピンよりも早期に孵化を促進した。また、1,10-phenanthrolineは二価の金属イオンのキレート剤として知られているが、その誘導体の構造活性相関研究により、キレート能が孵化促進活性に必須であることが明らかとなった。加えてその活性はニッケルイオンなどの二価の金属イオンとの共処理によって抑制されたことから、1,10-phenanthrolineが線虫卵内で何らか金属をキレートすることにより孵化を促進している可能性が考えられた。また、誘引物質に関しては新たに硝酸塩およびそのアナログがダイズシストセンチュウを誘引することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケミカルライブラリーからのスクリーニングにより、現在までにダイズシストセンチュウの孵化促進物質、および誘引物質を複数見出すことができている。加えて、見出した孵化促進物質の一つ、1,10-phenanthrolineの孵化機構を解析することで、既存の孵化促進物質と異なる孵化機構があること、その孵化機構に二価の金属イオンが関わっている可能性を示すことができた。以上の結果から本研究の目標を達成するために、今年度は概ね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きダイズシストセンチュウの孵化促進物質、誘引物質の探索を続けるとともに、これまでに得られた物質の構造展開を行うことでより高活性な物質の創製を目指す。加えて、これまでに得られた物質について、機能解析を行うとともに、遺伝子レベルでの効果をRNAseqによる応答遺伝子の解析や、応答遺伝子のRNAiでのノックダウン実験を行うことで検証する。 これまでにダイズシストセンチュウの孵化促進物質はグリシノエクレピンに加え我々が見出した1,10-phenanthroline以外には見つかっていない。またグリシノエクレピンは合成に手間がかかる点、1,10-phenanthrolineは二価金属イオンのキレート剤としての効果があり、防除効果以外に副作用が現れる可能性がある点から、高活性な新規孵化促進物質の創製はダイズシストセンチュウ防除法の確立のためにも必要である。そこで新規骨格を有する孵化促進物質の開発を特に注力して進めていきたい。
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Causes of Carryover |
合成、サンプリングを効率的に行うことができ使用する予定であった物品費が減少したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の研究を効率的に推進することによって発生した未使用額と、平成29年度請求額と合わせて平成29年度の研究遂行のために使用する予定である。
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