2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K18704
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
坂尾 こず枝 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 助教 (40713285)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 3Ac-Q分離精製 / X線結晶構造解析 / 生理活性評価 / ケルセチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度からの課題であったケルセチンの5箇所のヒドロキシル基のうち、3箇所をアセチル置換した3Ac-Qの混合体の分離精製ならびに、ヒト大腸がん細胞HCT-116を用いた、ケルセチンアセチル化体の評価を中心に行った。その結果、3Ac-Qの分離に適したHPLCカラムとして、ナカライテスク株式会社のπ-NAPカラム最適であり、合計2種類の3Ac-Qが合成されていることが判明した。また、昨年度に引き続き、単結晶化を試みた4Ac-Qにおいて、液液法による単結晶化に成功しX線結晶構造解析を行うことができた。さらに、HCT-116細胞を用いた生理活性評価において、4Ac-Q > 5Ac-Q ≧ 3Ac-Q(混合体)の順でアポトーシス誘導能が高いことが示されたことより、アセチル化による生理活性増加の起因は、アセチル化の数に限定されるものではなく、アセチル化される場所による可能性も示唆された。また、ケルセチンならびに4Ac-Qのアポトーシス誘導のシグナル経路に差異が無いかを調べるため、単一試料中に存在する35種類のアポトーシス関連因子を、同時に検出できる抗体アレイキットを用い測定したところ、4Ac-Qはケルセチンに比べ、活性化カスパーゼに結合し、不活性化することでアポトーシス誘導を抑制するタンパク質であるIAP(Inhibitor of Apoptosis Protein)ファミリーを強く抑制することが示された。一方、ケルセチンはDeath receptor 4 (DR4)として知られている、TRAIL-R1を活性化することが示され、これらの相違が、ケルセチンならびにアセチル化ケルセチンの生理活性の差異の一つの起因になる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度遂行予定であった3Ac-Q混合体の分離精製が可能であることが確認できた。また、既に得られていた5Ac-Qの単結晶に加え、本年度は4Ac-Qの単結晶化に成功し、X線結晶構造解析を行うことができた。また、前年度に行われたヒト乳がん細胞の実験で示され結果と同様に、ヒト大腸がん細胞による生理活性の変化の検討についても、アポトーシス誘導能が4Ac-Q > 5Ac-Qの順に強くなる結果が得られた上に、混合体ではあるが3Ac-Qを用いたアポトーシス誘導能試験では、5Ac-Qに僅かに低いが相応に順ずる誘導能を有することが示されたことで、アセチル化ケルセチンの生理活性増強の起因が、アセチル基の数ではなく、置換部位にあることが確定しうる段階までに進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、生物活性作用機序の解明として細胞実験を施行しうる純度と量を3Ac-Qで得ることで、アセチル化ケルセチンの生理活性増強の起因が、アセチル基の数ではなく、置換部位にあることを確定する予定である。また、当初の計画どおり、ケルセチンおよび各アセチル化ケルセチンと相互作用を示すターゲットプロテインを見つけ出し、その親和力の強さの違いを検証すると同時に、実験モデルマウスを用い、ケルセチンの代謝物および各アセチル化ケルセチンから得られる代謝物を比較検討し、吸収動態の差異について個体レベルで解明することで活性発現の違いを見出す予定である。
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