2017 Fiscal Year Research-status Report
同位体情報を活用した森林群落スケールのメタン交換量の変動要因の解析
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16K18718
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
坂部 綾香 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 研究員 (40757936)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メタン / 炭素安定同位体比 / ハンノキ / 渦相関法 / チャンバー法 / 熱帯泥炭 |
Outline of Annual Research Achievements |
インドネシアの泥炭湿地林で、微気象学的手法である渦相関法により生態系スケールのメタン交換量の観測を通年で行い、取得データの解析を行った。この観測により、ほぼかく乱の影響を受けていない熱帯泥炭湿地林におけるメタン交換量の雨季、乾季を含む季節変化の様子を明らかにした。さらに、この試験地を含めて、排水の行われた泥炭湿地林、排水後火災が起こった泥炭湿地林の3サイトの土壌を嫌気培養することで、土地利用の変化と土壌のメタン生成ポテンシャルの関係を調べた。培養実験によって、かく乱の影響を受けていない森林土壌のメタン生成ポテンシャルが最も高いことを明らかにした。これらの結果を併せて論文にまとめ、かく乱の影響を受けていない熱帯泥炭湿地林は、生態系スケールで雨季に小さなメタン放出源となるという結果を国際誌に投稿した。 滋賀県南部の温帯林において、湿地域に生育するハンノキがメタンを放出することが分かったので、樹木を介したメタン放出の生態系スケールのメタン収支への寄与を解明するために、ハンノキにチャンバーを設置し、樹木を介したメタン放出量を通年で観測した。ハンノキからのメタン放出量の変動幅、季節変化を明らかにした。また、樹木を介したメタン放出のメカニズムを解明するために、チャンバー観測に加えて、地下水を採取し、溶存メタン濃度の測定、地温、地下水位、土壌水分、溶存酸素濃度といった土壌環境の観測も行った。さらに、幹チャンバー測定中の空気をバイアルに採取し、農業環境技術研究所でメタンの炭素安定同位体比の分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インドネシアの泥炭湿地林での渦相関法によるメタン交換量の観測結果をまとめ、国際誌に投稿できた点は、当初の計画以上に進んでいる。一方で、産休により野外調査を計画通りに行えなかったので当初の計画よりやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では、温帯・亜寒帯・熱帯林の4サイトを対象としていたが、温帯・熱帯林で得られているデータをより詳細に調べることで、有益な結果が得られると考え、温帯・熱帯林での観測、実験を重点的に行う。 インドネシアの熱帯泥炭湿地林での渦相関法によるメタン交換量の観測を継続し、メタン交換量の年々変動を明らかにする。また、土壌チャンバー観測に向けたチャンバーの制作を行う。さらに、土壌の嫌気培養実験の対象サイト、サンプル数を増やし、雨季、乾季のメタン生成ポテンシャルの違い、温度変動に対するメタン生成ポテンシャルの違いを明らかにする。この培養実験で生成されたメタンの炭素安定同位体比を分析し、各土壌におけるメタン生成機構の違いについて検討する。 滋賀県の温帯林において、ハンノキからのメタン放出量の観測を継続し、すでにデータを取得している生態系スケールのメタン交換量と比較することで、樹木を介したメタン放出が生態系スケールのメタン収支に与える影響を評価する。また、ハンノキから放出されるメタンと、地下水の溶存メタンの炭素安定同位体比を計測し、季節進行に伴う土壌環境の変動がハンノキから放出されるメタン放出量にどのように影響するのか明らかにすることを目指す。
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Causes of Carryover |
5か月間、産休および育休を取得したため。インドネシアの熱帯泥炭湿地林における生態系スケールのメタン交換量の観測に必要な旅費および物品費、土壌メタン交換量の観測に向けたチャンバー製作費、土壌培養実験に必要な物品費、滋賀県の温帯林における生態系スケールおよび幹、土壌メタン交換量の観測に必要な旅費および物品費、メタンの炭素安定同位体比の分析に必要な旅費および物品費に使用予定である。
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Research Products
(1 results)