2016 Fiscal Year Research-status Report
菌根性きのこ発生に及ぼす共生細菌群の影響および機能評価
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16K18725
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
小長谷 啓介 国立研究開発法人森林総合研究所, きのこ・森林微生物研究領域, 主任研究員 (90612739)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | キツネタケ / 多様性 / 窒素固定 / バクテリア / 微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸上植物の80%の根には「菌根菌」と称する共生菌が定着し、宿主植物の成長を支えている。この菌根菌の周りには細菌を初めとする多様な微生物が生息し、菌の成長や菌根の形成量に影響を与えることが分かってきた。しかし、こうした生物間相互作用を通じて、バクテリアがキノコの発生にどのような影響を与えているかは明らかでなく、菌根共生の形成・発達に及ぼすバクテリアの機能の包括的な理解は進んでいない。本研究では、菌根菌が感染した根の内部および周囲に生息する土壌細菌の多様性と、これら細菌が菌根共生系の成立と発達(菌糸成長、菌根の形成量、キノコの発生頻度)に及ぼす影響を明らかにする。2016年度は、菌根菌および細菌株の収集、分離した細菌株の分類属性の推定、キツネタケ菌根の周辺に生息する細菌群のフロラ解析を行った。長野県シミック薬用植物園のクリ園において、外生菌根菌キツネタケの菌根から計248の細菌株を得た。森林総研およびシミック植物園から計20のキツネタケ菌株を得た。16S rDNAのV3、V4領域の解析から、各細菌株の分類属性を推定した。多くがRhizobiumやBradyrhizobiumなど根粒菌として知られる分類群であった。次に、キツネタケ菌根に含まれる細菌相を16S rDNAのV3、V4領域を対象としたクローニング解析により調査した。主にProteobacteria門が優占しており、分離培養法では検出されなかった多様な系統群を確認した。しかし、分離株としても得られたBradyrhizobiumは、キツネタケやその他の菌根菌が感染した菌根から多く検出された。以上から、キツネタケ菌根の周辺にはProteobacteria門を代表とする多様な細菌が生息し、なかでもBradyrhizobium属が普遍的に存在していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通りに、多様な細菌株と十分量の菌根菌株を得ることができた。野外における細菌の多様性解析については、次世代シーケンス解析を利用する予定であったが、解析に必要な十分量で高品質のDNAを抽出することができなかったため、クローニング解析に変更した。多様な分類群の検出に成功し、当初の予定であったキツネタケ菌根周辺の細菌相を明らかにすることができた。以上から、当初の目標を概ね達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度に分離培養した細菌株とキツネタケを共培養し、キツネタケの菌糸成長への影響(例、成長を促進/抑制、または影響なし)を指標として、細菌株の選抜を行う。予備試験として、無菌条件下で育成したアカマツにキツネタケと細菌株を接種して、菌根の形成量やキノコの発生量を測定する。
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Causes of Carryover |
クローニング解析において、植物のDNAを増幅せずに、細菌の16SrDNAだけを選択的にPCR増幅するプライマー探索に時間がかかり、予定していた細菌株の種同定解析が全て終わらなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に細菌株の種同定に関わるDNA解析を行う。
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