2017 Fiscal Year Research-status Report
菌根性きのこ発生に及ぼす共生細菌群の影響および機能評価
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16K18725
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
小長谷 啓介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90612739)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 菌根 / 細菌 / 共生 / キノコ / 生物間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸上植物の80%の根には「菌根菌」と呼ばれる共生菌が定着し、宿主植物の成長を支えている。この菌根菌の周りには多様な細菌が生息し、菌糸成長や菌根の形成量に影響を与えることが分かってきた。しかし、こうした生物間相互作用を通じて、細菌が菌根菌のキノコの発生にどのような影響を与えているかは明らかにされていない。これまでの研究により、山梨県のクリ園で確認されたキツネタケ菌根の表面および内部には多様な細菌が生息し、中でもBradyrhizobiumやRhizobiumなどのリゾビウム科細菌が多く分離培養された。本研究では、キツネタケ菌根の表面・内部から分離培養された細菌が、同菌の菌糸成長に及ぼす影響を、共培養法により明らかにした。山梨県シミック薬用植物園のクリ園において、キツネタケ菌根から分離培養した34系統を含む計80の細菌株を供試した。キツネタケは同調査地および森林総合研究所(茨城)から得られた計5菌株を供試した。グルコース含量を10分の1に調整したMMN培地のプレート(径9 cm)の中心に、径7 mmのキツネタケ菌糸片をおいた。菌糸片の中心部から90度の間隔で2 cm離れた四方に、細菌を線状(長さ1 cm)に塗布した。室温(23から25度)で30日間培養した後に菌糸の伸長面積を計測した。細菌18系統の全ての細菌株はキツネタケ菌株の成長を阻害した。その他の系統では、菌根菌と細菌の株の組合せによって、キツネタケの菌糸成長に及ぼす影響は阻害から促進まで大きく異なった。クリ園で最も多く検出・分離されたBradyrhizobiumの1系統は、概ねキツネタケの菌糸成長に影響を与えないか成長を促進させることが分かった。細菌と菌根菌間の相互作用は、細菌の種のみならず、細菌と菌根菌それぞれの個体レベルの組合せによって異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
菌根菌と細菌の共培養試験について、当初計画していたとおり実験が進み成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画のとおり、菌根共生系に細菌株を無菌的に導入することで、細菌が菌根菌の子実体発生に及ぼす影響を調査する。
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Causes of Carryover |
想定より物品の使用量が少なく済み、購入費を節約できたため。細菌株の種同定や菌根菌のゲノム解析に関するDNA解析費、また菌株の保存にかかる物品購入費に充てる。
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