2016 Fiscal Year Research-status Report
新規in vitro誘導系を用いた二次木部管状要素形成における細胞骨格挙動の解析
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16K18726
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山岸 祐介 北海道大学, 農学研究院, 助教 (80770247)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 組織構造 / 植物組織培養 / 二次木部 / 細胞骨格 / 二次壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が木質資源として利用する樹幹は大部分が二次木部細胞で構成されており、多様な形態をもつ二次木部細胞の分化形成過程の理解は木質資源の効率的な生産と利用の観点から重要である。本研究では、樹木由来の培養細胞を用いて二次壁が広い面積で肥厚し有縁壁孔を形成するといった二次木部を構成する道管要素や仮道管の特徴をもつ細胞を誘導し、その分化過程における細胞骨格の挙動を解析する。本年度は交雑ポプラ培養細胞から管状要素が高頻度で誘導される培地条件の検討として、異なる種類のオーキシンの培地添加を試みた。また、細胞骨格の挙動を解析するための形質転換体の作出に取り組んだ。 これまで交雑ポプラ培養細胞の増殖維持に用いてきた2,4-Dに加え、新たに2,4-Dとは異なる細胞間輸送様式を持つ合成オーキシンとされるNAAを交雑ポプラ培養細胞の増殖と管状要素分化誘導に用いたところ、2,4-D添加培地で増殖したカルスはブラシノライド単独添加培地で高い誘導率を示したのに対し、NAA添加培地で増殖したカルスの管状要素誘導にはブラシノライドに加えNAAの添加が必要であった。これらの結果から、交雑ポプラカルスにおける管状要素分化にはオーキシンとブラシノライドの両者の作用が重要であることが明らかになった。また、NAAとブラシノライドを組み合わせた条件で誘導された管状要素のサイズは従来のブラシノライド単独添加条件で誘導されたものよりも大きくなる傾向にあり、植物成長調節物質の組み合わせによって誘導される細胞サイズを制御できる可能性が示されたといえる。 また、細胞壁形成位置の決定に関わる細胞骨格である微小管やアクチンを標識し可視化する目的で、それぞれ微小管関連タンパクとアクチンを異なる種類の蛍光タンパク質二重標識した遺伝子の導入をアグロバクテリウム法を用いて行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交雑ポプラ培養細胞の二次木部様管状要素誘導は、従来ブラシノステロイドの単独添加によって実施されてきたが、今年度異なる種類のオーキシン添加を管状要素分化誘導条件に組み入れたところ、管状要素の誘導量と誘導された管状要素のサイズがそれぞれ変化することが明らかになった。また、誘導された管状要素のサイズと細胞内の二次壁肥厚様式に関係性があるという結果が示された。これらの結果から、オーキシンを中心とした植物成長調節物質の組み合わせ添加によって、管状要素の誘導量だけでなく、管状要素のサイズと二次壁肥厚様式を制御できる可能性が示されたといえる。また、分化過程の細胞壁形成位置の決定に関わる細胞骨格を標識する可視化する目的で、それぞれ微小管関連タンパクとアクチン結合タンパクを異なる種類の蛍光タンパク質と二重標識した遺伝子の導入をアグロバクテリウム法を用い、形質転換ラインの作出に成功した。 二次木部様管状要素分化誘導条件の改良が進んだことと、次年度以降の細胞骨格の経時観察を行う材料が獲得できたことから、概ね順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度効果が明らかになったオーキシンの複合添加を中心に、今年度に引き続き二次木部様管状要素誘導条件の改良に取り組む。各誘導条件の評価には、誘導量だけでなく管状要素サイズ、二次壁肥厚様式の分類を取り入れる。更に針葉樹であるスギの培養細胞についても同様に管状要素誘導条件の検討を行う。また、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて、管状要素分化過程にある細胞の細胞骨格の挙動を連続的に解析する。また、電解放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、誘導された管状要素の二次壁における細胞壁成分の堆積や、細胞壁修飾構造を詳細に観察する。
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Causes of Carryover |
英文校閲費、論文投稿費を計上していたが、データの取りまとめに時間を要したために年度内の投稿が行えなかった。 また、消耗品費として培養関連器具類を計上していたが、本年度内の購入が間に合わない器具類があった。これらについては来年度の早期の購入を予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度予定していた論文投稿を行うため、新たに次年度に投稿費、英文校閲費を計上する。 また、培養関連器具類の購入のために、消耗品費を上乗せして計上する。
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