2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a prediction method and diagram representation of optical properties of cellulose derivatives based on computational chemistry
Project/Area Number |
16K18733
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
早川 大地 昭和大学, 薬学部, 助教 (20761141)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セルロース誘導体 / 複屈折 / 計算化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
セルロース誘導体は、液晶ディスプレイの偏光板保護フィルムなどの光学フィルムとして広く活用されている。より優れた光学フィルムを合理的に設計するためには、セルロース誘導体の分子構造と複屈折(すなわちフィルムの縦方向と横方向の屈折率の差)の関係を明らかにする必要がある。本研究では、電子計算機を用いてセルロース誘導体フィルムの複屈折を算出・予測する方法を考案し、これを実行するために必要なコンピュータプログラムを作成した。 セルロースアセテート(CA)は、セルロースの水酸基をアセチル基で置換することにより得られるセルロース誘導体の一種である。CAは光学フィルムとして広く工業利用されており、分子構造と複屈折の関係について調べた実験的研究が多数報告されている。先行研究において、実験的に測定されたCAの複屈折の波長依存性に基づき、CAの分子構造と複屈折の関係を説明するモデルが報告されていた。これはマクロな実験結果に基づいたモデルと位置づけられる。本研究では、考案した手法と計算プログラムを用いて、CAの分子構造と複屈折の波長依存性の関係を原子・電子レベルのミクロな立場から調べた。この結果、先行研究のモデルがミクロな観点からも妥当であることを理論計算により示すことができた。本研究は、セルロース誘導体の構造と複屈折波長依存性の関係をミクロな立場から考察した初めての研究となった。加えて、本手法はセルロース誘導体の複屈折を適切に予測できることがわかったので、複屈折が未知のセルロース誘導体の複屈折予測への活用が期待できる。更に、セルロース誘導体繰り返し単位の平均分極率と分極率異方性の計算値を2次元プロットすることで、光学的性質を可視化するダイアグラムを考案した。本研究を通して開発された方法は、今後セルロース系ポリマーの構造物性相関研究や計算機支援の光学フィルム設計への活用が期待される。
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