2017 Fiscal Year Research-status Report
木部細胞において表層微小管の空間構造を制御する新規転写因子の機能解明
Project/Area Number |
16K18734
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
高田 直樹 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所森林バイオ研究センター, 主任研究員 等 (90605544)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 組織構造 / 表層微小管 / 二次壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞壁の二次壁はセルロースミクロフィブリルの配向の違いにより外層(S1層)、中層(S2層)、内層(S3層)に分けられ、セルロースミクロフィブリルの配向変化が木材の強度を決定する要因の一つであることが知られている。本課題では、セルロースミクロフィブリルの配向性を細胞内で制御する表層微小管に着目し、表層微小管の空間配置を制御する細胞内分子メカニズムの解明を最終目標としている。これまでの研究からポプラにおいて表層微小管の密度と平行性を制御する新規転写因子遺伝子(#26遺伝子)を同定している。昨年度までの研究では、#26遺伝子を過剰発現させたポプラを用いて#26遺伝子の機能解析を進めてきた。本年度は#26遺伝子及び#26遺伝子のパラログ(#26b遺伝子)をゲノム編集技術によりノックアウトした二重変異体を用いて、細胞壁の厚さの計測と木部組織における二次壁形成関連遺伝子の発現パターンを解析した。その結果、#26遺伝子/#26b遺伝子の二重変異体では野生型と比較して木繊維の細胞壁厚が約半分に薄くなることを明らかにした。一方で、道管要素の細胞壁の厚さには大きな違いが見られなかった。二重変異体の木部組織から抽出したRNAについて、real time PCRにより遺伝子発現解析を行った結果、二重変異体では木繊維の二次壁形成のマスター転写因子であるNST/SNDオルソログの遺伝子発現量が減少していた。これまでの結果を総合的に考察すると、#26遺伝子/#26b遺伝子がコードする転写因子はNST/SNDオルソログと正の転写フィードバックループを形成することにより、二次壁の厚さや表層微小管の空間配置を制御していると推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
木繊維の二次壁形成過程における#26遺伝子及び#26遺伝子のパラログ(#26b遺伝子)の機能推定が順調に進んでいる。#26遺伝子を過剰発現させた組換え体及び#26遺伝子/#26b遺伝子をノックアウトした二重変異体を用いることにより、#26遺伝子と#26b遺伝子が二次壁の厚さを制御する転写因子であることを明らかにした。また、分子生物学的手法を用いることにより、両遺伝子を介した二次壁形成の分子ネットワークの一端を解明した。
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Strategy for Future Research Activity |
#26遺伝子/#26b遺伝子をノックアウトした二重変異体について、二次壁の壁層構造(S1層、S2層、S3層)を電子顕微鏡を用いて詳細に観察する。また、二重変異体の木部から抽出した細胞壁画分を用いて、セルロース、ヘミセルロース、リグニンの量的かつ質的変化をGC-MSや2D-NMRにより解析する。
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Causes of Carryover |
実験の進捗状況を鑑み、一部の遺伝子解析用試薬の購入を見送った。平成30年度に当該試薬を購入する予定である。
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Remarks |
招待講演:岩手大学農学部附属寒冷バイオフロンティア研究センター主催 112th CRC Seminar(兼 第7回植物生命科学セミナー) 発表標題:樹木の二次壁の厚さを制御する 発表者名:高田直樹
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