2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K18739
|
Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
金治 佑 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 国際水産資源研究所, 研究員 (10455503)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 空間モデル / 種多様性 / ハクジラ / イルカ / 北西太平洋 / ライントランセクト / 生息地 |
Outline of Annual Research Achievements |
北太平洋広域を対象とした分析から、これまでに種多様性の勾配に3つのパターンが明らかにされてきた。1.生態学の共通原則とされる緯度勾配、2.亜熱帯域と亜寒帯域の境界となる移行域での多様性増大、3.沿岸-沖合間の勾配。しかし、広大な外洋域までを含む北太平洋全体を対象としたケースでは、低解像度のデータのみを用いたことから、環境変動の大きな沿岸域の特徴を捉えきれず、沿岸-沖合間の勾配についてはさらに検討が必要であった。そこで、日本周辺を中心とした北西太平洋海域での鯨類目視調査データを抽出し、高解像度の海洋物理環境データを用い、空間モデルの解析を進めた。また空間モデルの性能評価・改善を行うために、空間モデルに依らない従来型ライントランセクト法での個体数推定結果も並行して行い、推定結果の比較を進めた。また、空間モデルをライントランセクト法に適用する場合、階層構造となり誤差推定に問題が生じる。それを解決するために階層ベイズ法の適用も検討した。これらの結果、これまでは明らかにされてこなかった沿岸域での詳細な分布特性が明らかとなった。たとえば、ハナゴンドウは黒潮-親潮移行域や黒潮フロントに関連した分布を持つことが示され、ハンドウイルカはさらなる沿岸付近に好適域を持つことが明らかとなった。また空間モデルによる個体数密度推定は従来法に比べて遜色なく、むしろ長期データを扱う場合に問題となる調査設計の一貫しない部分に対しても、柔軟に扱うことができるため、時空間的な変動を扱ううえで有益な方法であることも示された。また副次的成果として、Ecopathモデルのパラメータとして、主要小型鯨類の空間的な個体数推定値を提供することにより、北西太平洋の生態系モデル構築にも寄与した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北太平洋全域での多様度の評価はすでに前年度に完了し、当初の研究計画以上に進展したことから、今年度はさらに詳細な分析として、時空間解像度を高めたうえで、日本周辺での空間モデル構築にとりかかった。空間モデルによる成果は国内・国際学会での発表にとどまったが、空間モデルによる推定値と比較するために実施した従来法による個体数推定の結果について、査読付き国際学術誌に公表することができた。空間モデル構築に関しても、最終年の取り纏めに向けた素地は整っており、これをもとに沿岸-沖合での多様性勾配、経度方向の勾配、島嶼域の効果等について詳細な検討を進めることができる。さらに、本研究成果を生態系モデルの研究グループに提供することで、北西太平洋の生態系モデル構築に貢献した。生態系モデルの成果についても、共著者として査読付き国際学術誌に公表している。以上から、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
北西太平洋での長期目視データを用い、主要小型鯨類を対象として、一般化加法モデル、階層ベイズモデルに基づく空間モデルを最終化させる。推定結果に基づき、各鯨種の個体数について空間マップ作成し、重ねることで、沿岸域を中心とした種多様性勾配を明らかにする。北太平洋広域を対象とした分析では十分明らかにされなかった、沿岸-沖合での多様性勾配、経度方向の勾配、島嶼域の効果等について詳細な検討を進める。また広域の分析では、各年の調査域がパッチ状で一貫していないことから長期データを統合して分析を進めたが、北西太平洋では時系列データが充実している。毎年の個体数、種多様度を空間的に推定することも可能で、広域と日本周辺域双方の分析から、利点・欠点を補完する形で、種多様性の空間勾配が明らかにされる。
|
Causes of Carryover |
(理由) 国際学術誌に掲載された論文1編の掲載料が年度内に請求されなかった。 (使用計画) 前年度掲載論文の掲載料支払い、国際学会への出席、成果とりまとめに関連して必要となる文献購入費等を予定している。また、論文作成にあたって必要な英文校閲、掲載料、カラーページチャージの支出を予定している。
|
Research Products
(6 results)