2017 Fiscal Year Research-status Report
フグ毒テトロドトキシンの腸管吸収と尿中排泄のメカニズムの解明
Project/Area Number |
16K18750
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
松本 拓也 県立広島大学, 生命環境学部, 助教 (30533400)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フグ毒 / テトロドトキシン / 腸管吸収 / Caco-2 / 尿中排泄 / LLC-PK1 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
フグ食中毒におけるフグ毒の主要成分であるテトロドトキシンの体外への排泄は,食中毒患者の血液や尿を分析した報告書等から尿中排泄が主要な経路であると推定されるが,その詳細なメカニズムは解明されていない。 平成28年度までの研究成果と合わせて,ブタ腎近位尿細管由来LLC-PK1細胞を用いたテトロドトキシンの尿中排泄輸送に関する論文を査読付き学術誌に投稿し受理された。さらに,国際学会において,テトロドトキシンの尿中排泄機構に関するこれまでの概要をポスター発表した。また,これまでの研究結果から,ヒトにおけるテトロドトキシンの尿中排泄には,有機カチオンを輸送するトランスポーターであるSLC22に属するOCTsやOCTNsが関与すると考えられたので,これらのトランスポーターを動物細胞で個別に発現させてテトロドトキシンの輸送活性を評価するため,ヒトのcDNAライブラリーから,カルニチントランスポーターであるOCTN1およびOCTN2のcDNAをクローニングし,cDNAの全長塩基配列を確認するとともに発現ベクターを作製した。また,トランスポーターを発現させるため,イヌ腎臓由来MDCKII細胞を購入し,培養条件や発現ベクターの導入条件を検討した。また,ヒト腸管におけるテトロドトキシンの吸収に関わるトランスポーターの探索については,ヒト腸管由来Caco-2細胞によるテトロドトキシンの吸収輸送阻害実験の再実験に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者らは,ブタ腎近位尿細管由来LLC-PK1細胞を用いて,フグ毒の主要成分であるテトロドトキシンの尿中排泄メカニズムを評価した。その結果,有機カチオントランスポーターの阻害剤であるテトラエチルアンモニウム, L-カルニチンおよびシメチジン添加区のテトロドトキシンの排泄輸送は,トランスポーター阻害剤を加えない対照区の4割から5割まで有意に低下したことから,有機カチオンを輸送するトランスポーターがテトロドトキシンを尿中へ排泄していると考えられた。有機カチオンを輸送するトランスポーターであるSLC47に属する薬物排泄トランスポーターMATEsの阻害剤添加区では,テトロドトキシン輸送量は対照区の9割程度に低下したが,いずれも有意差は認められず,テトロドトキシンの輸送にはMATEsは関与しないと考えられた。これらの結果から,ヒトにおけるテトロドトキシンの尿中排泄には,有機カチオンを輸送するトランスポーターであるSLC22に属するOCTsやOCTNsが関与すると考えられた。そこで,個別に動物細胞で発現させたトランスポーターによるテトロドトキシンの輸送活性を評価するため,ヒトのcDNAライブラリーから,カルニチントランスポーターであるOCTN1およびOCTN2のcDNAをクローニングした。 また,ヒト腸管におけるテトロドトキシンの吸収に関わるトランスポーターの探索については,ヒト腸管由来Caco-2細胞によるテトロドトキシンの吸収輸送阻害実験を行った結果,有機アニオン輸送ポリペプチドOATPs,薬物排泄トランスポーターMRPsおよび有機カチオントランスポーターOCTsの阻害剤添加区でテトロドトキシンの吸収輸送に阻害効果が見られたが,データにばらつきがあるため再検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までの成果に基づき,テトロドトキシンを尿中へ排泄輸送すると予測されるOCTN1およびOCTN2トランスポーターの発現ベクターをイヌ腎臓由来MDCKII細胞,または,ヒト腎臓由来HEK293細胞にトランスフェクション法で遺伝子導入し,トランスポーター発現細胞を作製する。培養細胞に個別に発現させたトランスポーターのテトロドトキシン輸送活性を測定し,テトロドトキシンの輸送への寄与率を調べる予定である。 テトロドトキシンの消化管吸収については,Caco-2細胞によるテトロドトキシン吸収輸送のトランスポーター阻害試験を追試するとともに,テトロドトキシンの吸収輸送に関わると予測されるトランスポーターを複数選び,それらのcDNAをヒト小腸cDNAライブラリーからクローニングして同様に発現ベクターを作製し,動物細胞に発現させてテトロドトキシンの輸送活性を測定する予定である。
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Causes of Carryover |
平成29年度では,物品費として計上した予算に余剰が発生したため,次年度使用額が生じた。平成30年度は,所属学部を異動したことにより,新たに研究室を立ち上げる必要があることから,研究機器や試薬などの購入費に充てる予定である。
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