2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K18757
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
大仲 克俊 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (80757378)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 企業の農業参入 / 農産物輸出 / 農業の担い手 / 日本酒 / 惣菜 / 高付加価値化 / アメリカ / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究では、日本酒製造事業者や惣菜製造・販売事業者の農業参入を中心に研究を行った。日本酒製造事業者では、酒造好適米の生産の取組みと利用体制に対する調査であり、利用を通じた商品の高付加価値化や情報発信力の強化に繋げていることを確認した。特に、近年は日本酒の輸出量は増加傾向にあり、国の進める農産物の輸出拡大に貢献している。平成28年度に調査を行った新潟県のW社とA社、愛知県のS社では、農業生産への取り組みみを通じて、輸出も含めた新たな農業経営の展開を図っていることが確認できた。また、これらの企業は、日本酒の販路開拓・高付加価値化(単価上昇)において輸出に積極的に取組んでおり、アメリカやヨーロッパ・東南アジアの市場に積極的に売り込んでいる。ただ、海外市場への売り込みは、様々な課題がある。 また、惣菜製造・販売事業者ではT社の取組みについて調査を行った。T社では、惣菜原料の生産を目的に野菜作を行っており、また、その生産物を効率的に利用するための枠組みも長期に渡る農業経営の取り組みから構築している。農業経営における農業生産・農産物利用の両面から農業経営の発展が見られ、地域農業における担い手として成長している。一方、T社も惣菜工場における労働力確保や新たな市場開発から、海外進出を目指しており、ベトナム人実習生の雇用や将来的な当該国への進出も考えていた。 そこで、これら企業の海外進出の取組みを踏まえ、アメリカとベトナム調査を行った。アメリカ調査では、農業団体・JETRO等の機関からアメリカにおける日本酒輸出の状況を調査し、現地小売店での視察も行った。ベトナムでは、現地のフエ大学の協力により野菜産地であるダラット地方の情報収集やホーチミン市においてベトナム人実習生の送り出しや帰国した実習生を通じた日本企業の進出について調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、熊本県・大分県における震災の影響により、当初の予定の熊本県、大分県の調査ができなかった。震災対応もあり、県庁への取材と県庁の取材を介した県内における農業参入企業の調査を行うことが困難と考えたためである。そのため、熊本県・大分県における調査は不十分なものとなっている。 それに対し、全国の動向に関する統計資料の分析や農林水産省の資料の収集等を行った。長期に渡り収集していた全国動向の資料の更新や農林業センサスによる分析も行うことができた。さらに、全国の一般企業の農業参入に対する既往研究の整理も行うことができ、一般企業の農業参入における全体像と来年度の実態調査における農業経営に対する論点整理は行うことができた。しかし、当初予定していた地域での実態調査が設定できないため、農林業センサスにおける集落カード等を活用した絞り込んだ地域の統計分析はできなかった。 また、実態調査では、熊本県・大分県の事例調査が出来ない中で、愛知県や静岡県、新潟県等における農業参入企業の事例を調査することができ、また、長期に農業経営を行う農業参入企業が、輸出等の多様な観点から海外進出を意向していることを確認することができた。それらの調査の蓄積により、平成28年度では、当初予定していた件における調査ができないことも踏まえ、アメリカ・ベトナムにおける海外調査を行った。これらの事例は食品企業によるものであるが、農業参入企業は自社の農業の取り組みを国内市場向けだけではなく、海外市場向けの商品の情報発信でも積極的に活用しており、マーケティング戦略の一環として重要な役割として位置づけている。また、国内市場に限界があるとの判断から、海外輸出向けの拡大を志向しており、今後、嗜好品の食品企業では海外戦略として活用していくケースも考えられる。そのため、農業参入企業の農業経営の展開において海外調査を行ったのである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、当初の予定であった、熊本県・大分県への調査を進める。また、静岡県、埼玉県の実態も調査を行う予定である。特に、熊本県・大分県における一般企業の農業参入において、行政政策の効果について検証し、政策の受け手としての農業参入企業について分析していく。また、静岡県・埼玉県では、大消費地に近いという地理的条件から一般企業の農業参入が進展していると考えられる。これらの県に対する調査から、一般企業の農業参入を選択する上で、誘致政策や地理条件がどのような関係があるか検証していく。また、調査対象と調査地域を絞り込み、これら地域における農業構造の把握や企業参入の影響を農林業センサスの集落カード等から分析する。 農業参入企業については、当初の予定通り、熊本県・大分県の農業参入企業の事例について調査を重ねていき、農業参入企業の農業経営の展開過程とその論理について分析する。特に、農業参入企業では、農業経営における生産過程の展開について、長期的な観測が行われておらず、農業経営を長期に継続している企業を中心に農業生産でどのような展開が見られるか検証していく。一方、農産物を利用する流通過程では既に農業参入企業が様々な工夫を行い、既存の農業経営と異なる展開が見られることが指摘されている。そこで、本年度では既に流通過程での様々な工夫を取組んでいる事例を中心に、これらの取り組みがどのように変化しているのか分析していく。必要に応じて既存の農業経営体と比較することも考えている。これらの分析を通じて、一般企業の農業参入における農業経営の展開過程の特色を示すことを目指す。 以上の分析から、平成29年度において、①農業参入企業の農業経営の展開方向、②農業参入企業への施策の効果、③地域農業・産業政策における農業参入企業への政策位置づけ、④農業構造・農業経営の変革主体としての農業参入企業について明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成28年度の震災の影響により、大分県や熊本県における調査が十分に行うことが出来なかったにより当初の計画通りに進まなかった。また、統計資料分析において、熊本県・大分県において一般企業が農業参入を行う具体的な調査地域の指定を出来なかったため、当該地区の統計資料の購入を行わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度では、当初予定していた熊本・大分の両県での調査を行う予定であり、また、統計資料も他の県も含めて購入する予定である。
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Research Products
(2 results)