2017 Fiscal Year Research-status Report
地域に根差した食農文化の多様性評価モデルの開発-東アジアの在来品種の維持を中心に
Project/Area Number |
16K18767
|
Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
冨吉 満之 久留米大学, 経済学部, 准教授 (20506703)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アブラナ科 / 地域ブランド / 山汐菜 / 久留米 / 筑後川流域 / 韓国 / 済州島 / コモンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、熊本での調査および情報収集を進めた。具体的には、小国町の黒菜、阿蘇の高菜、五木村の赤ダイコンに関する栽培状況や作物の特性について、現地調査や生産者からの聞き取りにより確認することができた。 「くまもと在来種研究会」と連動した取り組みでは、2017年7月に在来種セミナーを開催し、阿蘇の農業と在来種の活用に関して、特に世界農業遺産(GIAHS)との関係に着目して議論を行った。補足的ではあるが、熊本地震による地域農業への影響についての情報収集を進めた。 福岡県内に関しては、久留米市の「山汐菜(やましおな)」の調査をJAの協力の元で実施すると共に、流通業者などと「くるめ野菜ブランド研究会」を設立し、野菜のブランド化に関する対応策を協議した。また、筑前町や糸島市における在来種の活用を進める生産者・団体とのネットワークを広げた。 研究の理論的枠組みに関しては、食農環境研究会を開催し、環境経済学、農村社会学の専門家らと議論を進め、その土台を構築しつつある。特に環境経済学の領域で研究蓄積がある持続可能性をキーワードに、「クリティカル自然資本」の観点から作物の種子をどのように位置づけることができるかを検討した。また、世界における種子保全の動向、知的財産権、伝統知といった観点からのレビューを進めた。 最後に海外サイトに関して、中国については久留米大出身の中国人研究者とのネットワークをいかした情報収集と進めた。韓国についてはコモンズ研究を進める研究者とのネットワークを形成することができた。今後は特に済州島をターゲットとして調査をする予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外調査の準備にやや手間取っており、当該年度には現地調査を十分に行うことができなかった。しかし、理論枠組の検討、国内サイトでの調査は確実に進められており、遅れは軽微であるといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度の夏に中国四川省で開催される社会経済国際シンポジウムを通して、中国におけるネットワークを強化すると共に、現地調査を実施する。南山大学社会倫理研究所の篭橋一輝氏、歴史研究、薬学、民俗学などの分野の研究者と連携して、分析枠組の強化を図る。
|
Causes of Carryover |
中国研究者が秋に日本を訪問してくれたため、久留米で情報交換を実施することができ、中国本土への旅費を抑えることができた。国内サイトに関しても、熊本、福岡が中心であったため、旅費が少なくて済む状況であった。 今後は、海外での調査遂行、国内で形成したネットワークを活かした在来種の情報収集および整理を進めることで、旅費、研究協力者金、講演依頼などの形で使用を進める。更に英語論文の執筆を進めており、英文校正などの面で前年度よりも多く支出する予定である。これにより成果発表に向けた準備を進める。
|
Remarks |
研究会の開催(食農環境研究会):2017年12 (於:京都)
|
Research Products
(5 results)