2017 Fiscal Year Research-status Report
水田流域における農地水利用を考慮した統合型水循環モデルの構築
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16K18771
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
吉岡 有美 鳥取大学, 農学部, 助教 (40753885)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 地下水位 / 地下水涵養 / 扇状地地下水 / 河川と地下水との交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
・地下水面深さや地下水位変動特性を考慮して境界条件の設定方法について検討を行った.MODFLOWのような標準的な3次元地下水流動解析モデルでは,河川の河床堆積物の透水性を表すコンダクタンスとよばれるモデルパラメータと河川と地下水の水位差を乗じることで,河川からの涵養量を定量的に表現している.この手法では,河川水と周辺地下水との連続性を仮定する.しかしながら,観測値から地下水位が低く,水位差が大きい状況でも河川流量観測から推定された河川からの涵養が増加せず,連続性の仮定は成り立たず,水位変化によらない開放浸透現象が支配的となることを確認した. ・対象地上流部における地すべり性斜面崩壊により2015年5月以降に生じた河川での濁水流下と,同時期に生じた扇状地内での地下水位低下を契機とし,その前後での水田および河川からの涵養量の変化が地下水位に与える影響を評価した.斜面崩壊後,河川水による涵養に減少傾向がみられたが,河川流量減少が生じていたことから,濁水流下のみが要因ではないと判断した.さらに,河川水位と地下水位との相関解析の結果,2015年の地下水位低下時の関係は他の年と比べると特異であり,河川水位低下以外の要因がある可能性が高いことも併せて明らかになった.酸素・水素安定同位体比より河川周辺扇央部の左岸域では河川水による涵養の減少に伴って相対的に田面水による涵養の寄与が増加,右岸域では河川水による涵養と田面水による涵養の減少により地下水位低下が生じたことが灌漑期の地下水位が低く推移する原因であると推察された.2017年には,多雨の影響を受けて地下水位が回復傾向となったが,左岸域の河川周辺において田面水や降水による涵養の寄与の増加が影響していると推察された. ・研究結果の一部を学会誌に投稿誌し,論文が採択された.また,国際学会1件,国内学会4件,研究シンポジウム1件として発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた滋賀県の愛知川扇状地から,地下水位(連続観測及び一斉観測),地下水利用量,河川流量(水位),河川の伏没還元データなど,入力データ及びモデルの計算結果の検証のためのデータの蓄積が十分にある石川県の手取川扇状地を研究対象地に変更したため.さらに,水文データの整理,分析の結果,河川と地下水との水交換現象のモデル上の設定方法の検証,新規モデル化の必要性が高いことが明らかとなり,扇状地内の地下水における河川からの涵養,水田からの涵養,降水からの涵養のそれぞれの寄与を評価するために,定期的な採水調査を開始した.水田流域の水循環を解明するため,採水頻度を2ヶ月に一度と比較的高く設定したため,試料の分析作業に時間を費やした.モデルの検証のための,地下水位,河川水位など必要なデータの整理・分析を概ね完了することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
2015年灌漑期以降の地下水位変動に着目し,非定常地下水流動解析より水田からの涵養,および河川からの涵養の経時変化が地下水位に与える影響を評価する.現地採水調査は灌漑期において継続して実施する.研究成果を取り纏めて,学会発表や論文を投稿する.
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Causes of Carryover |
投稿した論文の掲載料として確保していたが,支払いが次年度となることがわかったため,当該年度の使用額が減額,次年度の使用額が増額となった.
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Research Products
(8 results)