2016 Fiscal Year Research-status Report
炭酸塩資材添加によるふん尿由来消化液の低コストな殺菌システムの開発
Project/Area Number |
16K18777
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
折立 文子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農村工学研究部門 地域資源工学研究領域, 主任研究員 (90535303)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 再生可能エネルギー / 殺菌 / 消化液 / 農地還元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,家畜ふん尿等のメタン発酵消化液の農地利用に向けた,炭酸塩資材を用いたpH調整による低コストな殺菌システムの開発を目的としている。初年度は殺菌効果の発揮と肥料成分損失抑制を同時に達成し得る炭酸塩資材添加条件を解明するため,既存の研究で大腸菌に対する殺菌効果が示されている炭酸ナトリウムを消化液へ所定量添加後のpH,炭酸イオン濃度,指標微生物数,窒素濃度の動態を把握するための培養試験を実施した。 室温で継続的な撹拌を行う条件では,時間経過に伴う試料中pHおよび炭酸イオン濃度の上昇とアンモニア態窒素濃度および指標微生物数の減少が確認された。これらの変化率は炭酸ナトリウム添加量に比例した。また,有蓋条件でのpH上昇率に対するアンモニア態窒素濃度減少率は,無蓋条件と比較して微小であり,有蓋による肥料成分損失抑制効果が示唆された。 指標微生物に関しては,腸球菌数および大腸菌数とふん便性大腸菌群数および大腸菌群数間でその動態は大きく異なり,理論的な微生物数の大小の逆転も観察された。検証の結果,分析に用いる培地の性質や,コロニーの色調の識別の困難さ等から生じる分析結果の過大もしくは過小評価の可能性が示唆された。消化液中の微生物分析には公定法がないため,既存の研究を参考に下水試験方法およびUSEPAに準拠した方法を用いたが,本研究のように懸濁物が多くかつpHの上昇を伴う消化液の分析に上記の手法を準用することの難しさが示唆された。本研究に適した微生物の分析および評価手法について検証を進め,初年度はその定性的な確認のみに留まった,殺菌効果の発揮と肥料成分の損失抑制を同時に達成し得る炭酸塩資材添加条件の定量的な解明を引き続き進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
消化液中の指標微生物ついて,初年度実施した試験結果から,当初計画していなかった本研究に適した分析および評価手法を検証する必要性が明らかになり,その検証に着手した。このため,当初計画していた殺菌効果の発揮と肥料成分の損失抑制を同時に達成し得る炭酸塩資材添加条件の定量的な解明については次年度以降となったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の試験結果に基づき,新たに検証が必要になった本研究に適した指標微生物の分析および評価手法の検証を引き続き実施すると共に,本年度に持ち越した殺菌効果の発揮と肥料成分の損失抑制を同時に達成し得る炭酸塩資材添加条件の定量的な解明を行う。また,当初計画どおり殺菌処理後の消化液貯留中の肥料成分損失抑制条件の解明および,システムの実用化におけるコスト・エネルギーの試算に必要な情報の収集に着手する。研究協力者の助言を得ながら効率的に研究を進め,可能な範囲で学会発表等成果の公表を行う。
|
Causes of Carryover |
物品購入の際に,見積額と実際の入札価格との間に差が生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分と合わせて,当初計画通り使用する。
|